先日2018年ベストトラック20(日本・アジア)を発表した。
今回は洋楽編だ。邦楽よりも洋楽を聴く割合が高いので20曲を選び出すのはかなり苦労した。
以下の3つを意識して20曲をチョイスしている。
・どれだけ聴き込んだか
・自分自身が好きか嫌いかで判断する(他の人のランキングを気にしない)
・ジャンルと知名度は無視する
要は「あんまり考え込まず、僕が良かったと思うものを選んだ」ということ。
是非僕が独断と偏見と直感で選んだベスト20トラックを楽しんでみてほしい。
20位 CHROMATICS “BLUE GIRL”
20位はアメリカのシンセポップバンドCHROMATICS(クロマティクス)の”BLUE GIRL”。
The XXのギター・ボーカルであるRomyのお気に入りバンドだということを知って興味を持った。(良かったらYouTubeのAmoeba Recordsのチャンネルを見て見て欲しい)
聴いてみたらなんとも夜が似合う大人なシンセポップだった。スモーキーな歌声と淡々としたベースラインがクセになる。
19位 Albert Hammond Jr. “Muted Beatings”
19位はThe StrokesのギタリストであるAlbert Hammond Jr(アルバート・ハモンド Jr)のソロから”Muted Beatings“だ。
ギターからマイクに持ち替えて歌う彼の姿は何回見ても新鮮だけれど、ファッショナブルでなんとなく親しみがあるルックスのおかげでスッと彼のソロの作品に耳をなじませることができる。
もちろんアルバートのソロではあるのだけど、ストロークスの根幹を支える彼のリズムギターのマナーはしっかりソロでも生かされている。カッティングを多用したギタサウンドや、ボーカルの裏でなる単音の歪んだギターなどは「ストロークス的」だと僕は思う。
来年はぜひストロークスとして日本に来てくれたらなぁ。
18位 Men I Trust “Seven”
カナダのDIYインディーポップユニットであるMen I Trust(メンアイトラスト)の”Seven”が18位だ。
何と言ってもベースの存在感がバンドを支えている。ボーカルのエマの透き通っていて浮遊感のある歌声と、ついつい耳を向けてしまうベースフレーズがそれぞれを生かしている。
この曲はMen I Trustの曲としては珍しく、壮大なギターソロで曲が閉められていてよく聴くファンとしては意外性があって好き。個人的に来日するまで押し続けたい大好きなバンドである。
Men I Trustについては以下の記事にも詳しくまとめている。他の曲を聴きたい、もっとよく知りたいと思ったらぜひ読んでみて。


17位 Ducktails “New Dreams”
17位はアメリカのインディーバンドであるReal Estateの元ギタリストで、現在はソロで活動するDucktails(ダックテイルズ)のNew Dream。
彼は様々な問題を起こしてしまいバンドをクビになり、その後ソロで活動を始めるも強姦疑惑が持ち上がり2017年の来日ツアー前に活動を自粛するに至った背景がある。そのため、2018年にこっそりEPをリリースするも大きく話題にはならず、音楽活動を続けていくけれど、大きくアルバムリリースなどで復帰するのはまだ先のことになりそう。
彼が起こした問題自体は許されるものではないけれど、彼が作る音楽は相変わらず素晴らしい。いわゆるインディーロック・ポップの優しいメロディーと、リピートされるフレーズが頭の中に強烈かつソフトな印象を与える。
16位 Superorganism “Everybody Wants To Be Famous”
みんな大好きSuperorganism(スーパーオーガニズム)の”Everybody Wants To Be Famous“を16位に選んでみた。
10代の日本人がボーカルを務める多国籍バンド、というだけで相当なインパクトはあるけれど「賑やかでサイケでポップな楽曲」の魅力が際立っている。
15位 James Blake “Don’t Miss It”
イギリスのミュージシャン/プロデューサであるJames Blake(ジェームス・ブレイク)がリリースした”Don’t Miss It“が15位。
とにかく歌詞がグサッと刺さる。
“The world has shut me out
If I give everything I’ll lose everything
Everything is about me
I am the most important thing
And you really haven’t thought
All those cyclical thoughts for a while”
“世界が僕を締め出す。もし僕が全てを与えたらなら、全てを失ってしまうだろう。全ては僕に関わることだ。僕が一番大事な存在だ。君はそんな堂々巡りしてしまうような考えを持ったことがないのかい?”
もしそんな考えが続いていくなら、面倒なことに関わらんなくてもいいし、出かける必要もないし、目を合わせる必要もないし、人生を無駄にすることもない。でも「それを」僕のように見逃すなよ。と続く。
内側に閉じこもることで精神的な平穏を保つことができるけれど、外側に向かって開いていくことを恐れてはいけない、ということメッセージを感じる。きっと自分自身にも、そして同じような人間に対して向けられた言葉だと思う。
一方でiPhoneのメモアプリに歌詞を打ち込んでいくシンプルだけど、発想の勝利なMVも面白い。ちょいちょいタイプミスしているし。
14位 indi “Demeter”
14位はニュージーランド出身であるシンセポップの新星、indi(インディ)の”Demeter”だ。
ビョークにも例えられる独特の世界観を持ったミュージシャンで、今年初めて来日も果たしている。
ステージに一人で立って、シンセサイザーやサンプラーを駆使して音を重ね、曲を作り上げていくスタイルは目を見張るものがあった。きっとこれからビッグになるアーティストだと僕は思うのでぜひとも抑えておいて欲しい。
indiについて詳しく知りたい方はこちらから!
ニュージーランドの新星 壮大でドリーミーな世界観 indi(インディ) を知っているか
13位 Otha “I’m On The Top”
ノルウェーの女性シンセポップアーティストであるOtha(オサ)の”I’m On The Top“が13位だ。
正直僕がこの曲を初めて知ったのは12月なので、年末のかなりギリギリで入り込んできたんだけど、ダンサブルで軽快な4つのリズムと、繊細なメロディーセンスがめちゃいい。
来年あたり更に知名度を上げてくるアーティストだと思っている。
12位 The Fearless Flyer “Ace of Aces”
当ブログでもなんでも取り上げているアメリカのミニマルファンクバンドVULFPECK(ヴルフペック)のメンバーが始めた再度プロジェクトあるThe Fearless Flyersの”Ace of Aces”が12位だ。
ベースのJoe Dart(ジョー・ダート)がブンブン首を振りながらファンキーなベースを弾きまくる一方で、ドラマーのNate Smith(ネイト・スミス)がめちゃくちゃにタイトでグルーヴィーなリズムを刻む。
リズム隊が好きな人は間違いなく楽しめるし、あなたのプレイリストに今すぐ追加して欲しい。
11位 Khruangbin “Maria Tambien”
タイ語で「飛行機」を意味するKhruangbin(クルアンビン)のMaria Tambienが11位だ。
タイファンクに影響された音楽を作るアメリカはテキサスのバンドなんて世界で彼らだけだ。ちなみにこの”Maria Tambien”が収録されたアルバム”Con Todo El Mundo“は1979年のイラン革命で失われた、かつて女性が持っていた権利がテーマになっている。
したがって、中東のイスラム音楽の影響と思われるようなフレーズが見られるし、様々な国や音楽から得た影響を彼らのファンクネスに落とし込んでいる。
Khruangbinについて詳しく知りたいあなたはこちらから!
異国の香り漂うロック。Khruangbin(クルアンビン) “Maria Tambien”
10位 Roosevelt feat.Washed Out “Forgive”
折り返し!10位はドイツのプロデューサー・ミュージシャンであるRoosevelt(ルーズベルト)の”Forgive“だ。何と言っても、チルウェーブの大物であり僕が大好きなWashed Outとのコラボ曲。
楽曲はディスコを感じるRooseveltらしさが表現されつつも、乗ってくるメロディラインや歌声はチルウェーブらしいリバーブのかかったWashed Outのそれ。最高。
Rooseveltについて詳しく知りたいあなたはこちらから!
チルウェーブとディスコの美しい重なり Roosevelt Feat. Washed Out “Forgive”
【 Music Heads Vol.2】踊れる80’sエレクトロ、でもバンドサウンド。ドイツのプロデューサRoosevelt(ルーズヴェルト)
下半期最もモダンでディスコなRooseveltの新アルバムから。新曲「Under The Sun」が公開!
9位 Pizzagirl “gymnasium”
今年発見したアーティストの中で一番ドンピシャだった。9位はイギリスはリバプール出身の男性SSWであるPizzagirl(ピザガール)の”gymnasium”だ。
名前のジャンキーでキュートな雰囲気そのまま、エレクトロポップな楽曲にヘタウマな歌が魅力。この完成された未完成感がたまらない。
Pizzgirlについて詳しく知りたいあなたはこちらから!
ダサカッコイイ未完成なシンセポップ Pizzagirl “gymnasium”
8位 Tom Misch “Disco Yes”
今年一番ブレイクした新人といっても過言じゃない。最近おしゃれな音楽を作るアーティストを輩出しまくっているイギリスはサウスロンドン出身のSSWであるTom Misch(トム・ミッシュ)の”Disco Yes“が8位。
軽快に跳ねるようなリズムを刻むギターリフが印象的で、ギターをなぞるように流れてくるベースもおしゃれ。ベスト20をチョイスした後に知ったんだけど、カルチャーに造詣が深いというアメリカの元大統領バラク・オバマ氏も“Best Song 20”に選んでいる。彼の歳で新しいカルチャーを探し出して取り入れること好奇心は見習っていきたいところ。
オバマ元大統領のお気に入りソングリスト今年も良いな、意外なところではtom mischやkurt vileなども入ってる pic.twitter.com/9TYyBXKvUj
— エリ (@ekr301) 2018年12月28日
7位 Hellogoodbye”S’Only Natural”
今年観たライブの中でも一二を争うかっこよさ、Hellogoodbye(ハローグッドバイ)の”S’Only Natural“が7位だ。
全米チャートでも14位入ったこともあり、15年以上のキャリアがあるインディーロックバンドが、ここにきて「ディスコ・ファンク」という武器を得た。とにかく踊れる。
曲を通してほぼ主役であるベースのうねりを聞いていると、身体が自然に動き出す。
Hellogoodbyeのライブレポはこちらから!
【ライブレポ】ディスコとポップの共演 HellogoodbyeとYoung Dreamsのツーマン
6位 Parcels “Lightenup”
若い才能、才能の塊だと思う。オーストラリア出身のバンドで、現在はドイツ・ベルリンを拠点に活動するファンクポップバンドParcels(パーセルス)の”Lightenup“が6位だ。
今年バンドとして初めてリリースしたフルアルバム”Parcels”自体が傑作であることは間違いないけれど、特にLightenupのカッティングギターの使い方やファンキーなリズムをモダンにアップデートした音楽がたまらなくいい。
ダフトパンクにプロデュースされた経験や歴史をしっかり感じさせながら、彼ら自身のスタイルを築き上げようする姿勢も感じる。2019年1月には来日公演も決定しているので、ぜひ興味のある方は行ってみるべき。
Parcelsについて詳しく知りたいあなたはこちらから!
ダフトパンクみがあるディスコサウンド Parcels “Lightenup”
5位 Sen Morimoto “Sections”
今まで聴いたことの無い音楽であり、その底知れない才能に圧倒された。シカゴ在住の日本人アーティストであるSen Morimotoの”Sections“を5位に選んだ。
もともとジャズミュージシャンとしてキャリアを歩んでいたが、ヒップホップにも大きな影響を受けた結果、ジャズの雰囲気を残すサックスを演奏しながらラップをするスタイルを生み出した。
バックバンドがあまりに強固なファンキーでグルーヴィーな音楽を演奏する。もうね、聴かない手はないですよ。
Sen Morimotoのライブレポはこちらから!
【ライブレポート/感想】Sen Morimotoは嫌味のない天才だった @代官山 SPACE ODD
4位 Vulfpeck feat. Louis Cole “It Gets Funkier IV”
今年はLouis Cole(ルイス・コール)がものすごい躍進を遂げた一年だったと思う。ミニマルファンクバンドであるVulfpeck(ヴルフペック)がLouis Coleをドラムに迎えてリリースした”It Gets Funkier IV“が4位。
語り出すと止まらないので簡単に説明すると「グルーヴがが全て」みたいな曲だ。ミニマルなドラムセットで刻むLouis Coleのドラムはシンプルながら延々聴いてられる気持ち良さが半端じゃない。脳みそのスイートスポットを突きまくられる。ベーシストであるJoe Dart(ジョー・ダート)がゴリゴリな音で弾きまくるベースソロも延々リピートして聴いた。最高だから。
VULFPECK feat. Louis Coleの”It Gets Funkier IV”についてはこちらから!
VULFPECK(ヴルフペック) feat Louis Cole “It Gets Fuckier IV”
3位 Loius Cole “F it up”
いよいよベスト3だ。先ほどに引き続き、超絶ドラマー兼、スーパー変態マルチプレイヤーであるLouis Coleの”F it up“が3位だ。
2018年8月にリリースされた”Time”というアルバムは本当に名盤であり、彼の本気が詰まったポップネス・ファンクネスが表現されていて素晴らしい。
でも僕はふざけたMVにものすごいテクニックで曲を演奏しきるLouis Coleが好きなので、あえて”F it up“を選んでみた。(アルバムには収録されていない)
Louis Coleついて詳しく知りたいあなたはこちらから!
ふざけ倒す超絶エレクトリックファンク Loius Cole(ルイスコール) “F it up”
【Music Heads Vol.9】ドラムもシンセも上手すぎるシュールな変態、Louis Cole(ルイス・コール)
優しくなったエレクトロファンク Louis Cole(ルイス・コール) “Phone”
2位 MGMT “When You Die”
第二位!僕らが大好きなMGMTが帰ってきた!”When You Die“!
サイケでポップで、脱力感があって、歌詞がなんだか皮肉が効いていて、「あぁこれが僕が待っていてMGMTだ!!!」と上半期毎日聴いていたぐらいの勢いで気に入っている。
フジロックでのパフォーマンスをこの目で見れなかったのは残念だった。しかし”When You Die”が収録されたアルバムである”Little Dark Age“自体はとにかく素晴らしいバランス感覚だ。サイケデリックであるけれど、昔懐かしいノスタルジックなシンセサイザーの音があり、メロもポップ。
MGMTのフジロックライブパフォーマンスを中継で見た感想はこちらから!
君はフジロックでサイコーのパフォーマンスをぶちかましたMGMTを観たか?
1位 Arctic Monkeys “One Point Perspective”
今年の一位はArctic Monkeys(アークティックモンキーズ)の”One Point Perspective“だ。これはランキングを作り始めて数秒で「この曲が一番だな」と決めていた。
“One Point Perspective“が収録されたアルバムである”Tranquility Base Hotel & Casino“がバンドの方向性を180度変えてしまう「分岐点」みたいな作品だった。アルバムの価値や批評は僕のレビュー記事に譲るとして、その中でも何度もリピートしたのが”One Point Perspective”だ。
何と言ってもベースラインの美しさ。聴くたびに自然とベースラインを追ってしまう。快感すら覚える。
ギターボーカルのアレックスがライブの度にわざとらしくパフォーマンスをするのも好き。
“Bear with me, man. I lost my train of thought”
「ちょっと待ってくれ。考えがまとまらないんだ」
と、歌うところで「話の脈絡を失ってしまった男」を演じる。何だかわざとらしい芝居なんだけど、何度もみているとちょっとクセになる。
「10数年以上のキャリアがあるバンドが自ら方向性をガラッと変えても尚、音楽としての魅力が失われず、素晴らしいアップデートを見せつけてくれた作品」を代表する一曲だから、選ばざるを得ないよね。昔のアークティックモンキーズに囚われてしまっている人も一回聴いてみて。
Arctic Monkeysについて詳しく知りたいあなたはこちらから!
「線」で聴くアルバム。ARCTIC MONKEYS “TRANQUILITY BASE HOTEL AND CASINO” レビュー
ARCTIC MONKEYSの新譜”TRANQUILITY BASE HOTEL AND CASINO”ポップアップショップに行って来た
洋楽もたくさん聴きました!けど…
順位については人それぞれ思うところはあると思うけれど、Sleepyheadとしてはこのようなベスト20を選んだ。
たくさん音楽を聴いたつもりでいたけれど、ジャンルの偏りが大きかったり、自分が考えているほど聴いてはいなかったりした。2019年はもっと幅広く、カオスなランキングをあなたとシェアできるようどんどん新しい音楽をディグしていきたい。
今回のランキングをプレイリストにまとめているので、ぜひApple Musicの方でもフォローしてもらえると嬉しい。
ベストトラック20 日本/アジア編もあるよ!
同じランキングを日本/アジア編と称して作成している。
このランキングに興味を持っていただけたなら、きっと日本/アジア編も楽しんでもらえるはずだ。
