僕はオカルティックな都市伝説や迷信は信じていないけど、台湾のサイケデリックユニットMong Tongのアートワークと音楽にはなぜか惹かれてしまいます。去年リリースされたアルバム『Mistery』がNMEのThe 25 best Asian albums of 2020に選ばれ、サンプリングをベースとしたアンダーグラウンドな音楽活動に注目が集まっているMong Tong。
実は落差草原wwwwのメンバーのプロジェクトで、『Music From Taiwan Mistery Ⅱ』は彼らが発行しているZINEのサウンドトラックとしてリリースされています。表現のアートフォームに囚われず、映像やZINE、そしてライブパフォーマンスと活発な活動自体が彼らのアートに対する姿勢が最高にかっこいいですね。
上記のビデオでは、巨大な偽物のミッキーマウスだったり、奥行きが極端に狭い住宅や、奇怪なモニュメントなどの映像が繋ぎ合わされ一つの作品として成立してます。音楽の中には生活音や男性が喋る音声などがどこからかサンプリングされており、宮調式のような中国的な音階を感じさせたり、ドラがなったり、アンダーグラウンドな台湾の景色をありありと浮かび上がらせるわけです。
Mong TongがNMEに評価されたのか考えてみましたが、彼らにしか出せない音とコンセプトがあるからだと思います。台湾のオカルト・迷信を表現する音楽なんて聴いたことがないですし、台湾ネイティブでないと深いところまでたどり着けないジャンルです。仮に彼らがただのサイケデリックミュージックを作るユニットだったらここまでの注目は得られなかったはずです。己の出自や趣向にアイデンティティーを見つけ出し、適切な表現方法で音楽やアートワークに仕立てあげたことがポイント。
単なるオリエンタリズム的な視点を超えて、どれだけ逆立ちしても変えられない「国」と「そのカルチャー」はグローバルな環境で勝負する上で強い武器となります。日本にも伝統音楽や民謡を取り入れたアーティストがクールなインディーミュージックに軸足を置きつつシーンの中で存在感を出しています。民謡クルセイダーズなど。
もちろんアーティストとしての強いアイデンティティーの築き方、という面で語っているのでMong Tongと民謡クルセイダーズの間にはサウンド面の違いはあります。ただ、Mong Tongが唯一無二の存在に近づいていることは、己のルーツに向き合い自分が特別になれる要素をピックアップしたことだと思います。日本のサイケデリックバンドで、日本よりも欧米で人気がある幾何学模様が主宰するレーベルGuruguru Brainからリリースしているアーティストは、それぞれアイデンティティが強くて「ちょっと他のアーティストとは違うな」と思わせてくれます。(Mong Tongも所属しているレーベルです)
ちょっと不気味な音楽ではありますが、映像と合わせて見てみると引き込まれる魅力がありますのでぜひチェックを。ライブもめっちゃかっこいいです。