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エディ・スリマンが見出したバンド、Cherry Glazerrの新譜”Big Bang”

Cherry Glazerr – Big Bang (Visualizer)

 

アブリルラヴィーンが2010年代後半に登場しインディーロックの中で存在感を持ったアーティストに影響を与えたことはファンの間では知られていると思います。Soccer MommyやSnail Mailなどはインタビューでも語っていましたね。僕はCherry Glazarrの”Big Bang”を聴いた時に「これアブリルラヴィーンぽいなぁ」と感じました。

露出高めなアートワークが目を引きますが、ガレージロックのオーセンティックな荒々しさにやニューウェーブのダークな雰囲気が混ざり合っていていい。ボーカルのクリーヴィー・クレメンタインの歌が繊細のウィスパーボイスだと思ったら、サビ前の感情が高まったのびやかな歌声はどことなくアブリルを思い出させました。

調べてみるとSasamiことササミ・アッシュワースもシンセとして2015年から3年間ほど所属していたとのことで、日本での知名度はないですがアメリカのインディーロックのシーンでも実は重要なポジションのバンドじゃないかと思っています。また、サンローランのクリエイティブディレクターだったエディ・スリマンに気に入られて、Cherry Glazerrの2014FWのショーの音楽を制作。ボーカルのクリーヴィーはモデルとして出演しています。

Saint Laurent | Fall Winter 2014 2015 Full Fashion Show | Exclusive Video

 

エディ・スリマンのクリエイションと音楽は切り離せない関係であることはよく知られていることですが、世界的に名の知れたアーティストだけでなく、新興インディーミュージシャンに焦点を当てることすらあります。フィールドもスケール、そもそもの性質が異なりますが、以下の引用にあるように、彼の音楽に対するスタンスは実は僕ら音楽ブロガー・ライターが持つべき視点と共鳴するのかもしれません。エディ・スリマンほどの影響力を持つことは不可能に近いけれど、オルタナティブなクリエイションや音楽を売上や再生数などのビジネス偏重の姿勢で切り捨てないこと、きちんと注目し続けることでアーティストが前に進み続ける環境づくりに少しでも貢献したいですね。

「それこそが、自分にとって一番大切なことだから。僕の立場を利用すれば、ステージという目に見える場所を与えることで、オルタナティブミュージックやアーティストを世界に紹介することができる。数字を重視するソーシャルメディアのアルゴリズムが世界のメインストリームカルチャーを形成する時代にあって、オルタナティブな声がチャンスを得ることは非常に困難だ。残念ながら、今のメディアは不可視な現象を認めてはくれない。ファッションや写真を通じてそれができるのであれば、僕は喜んでできる限り協力し、支援を惜しまないつもりだ」

Quoted from – http://vogue.co.jp/lifestyle/article/hedi-slimane-on-alternative-voices-cnihub