好きなアーティストを応援するカタチはたくさんある。
CDを購入したり、サブスクリプションサービスで曲を聴いたり、ライブに足を運びグッズを買ってみたり。
ファンがアーティストにきちんとお金を落とすことで、アーティストはよりよい活動を続けることができるし、ファンはその対価を得ることができる。
昨今、違法な音楽サブスクリプションサービスが若年層の間でよく使われている。アーティストに入るべきお金が入らず、社会問題となっている。それでなくても、Youtubeなどでいくらでも「タダ」で音楽を聴ける時代がきていることは、音楽好きのあなたも感じていることだろう。
無料化する音楽をどのようにマネタイズし、健全なアーティスト活動を続けていくのか。たくさんのバンドやミュージシャンが頭を抱えている課題だと思う。
あるいは、ネットに無料音源をリリースしただけの若手バンドのことが大好きだけど、どうやって応援したらいいかわからない。グッズもないし、CDもリリースされていない…なんていうファンの人も案外いる。
こんな疑問を解決してくれるかもしれないWEBサービスがある。アーティストの「健全な活動」とファンの「健全なサポート」が成り立つ仕組み、それがMuserだ。
Muserとは?
Muserとは「いいね!と思ったアーティストにYELLを送って、その活動を応援するためのWEBサービス」である。従来のCD購入やグッズ購入などとカタチの異なる応援方法。好きなアーティストをよりダイレクトに応援できるサービスだと言えると思う。
参考 MuserとはMuserYELLというポイントを送ることで、演出がスペシャルに変化する。また、ライブ中の感想などをコメントとして送って直接アーティストをサポートすることができる。
アーティスト側もYELLの数字やコメントから会場の盛り上がりやファンの満足度がリアルタイムで感じられる。つまり演者と観客の間でのコミュニケーションを促進する役割も持っているわけだ。
正直これだけだと「どういうこと?」とお思いだろう。僕もこのサービスを知った時そう思った。
詳しく説明していきたいと思う。
YELLを送ってアーティストを応援できる
Muserには”YELL“という「ポイント」のような概念がある。ライブ中にスマートフォンの画面をタップすることで1YELLずつアーティストに対して投げ銭ができる。
100YELLを100円から購入でき、ライブ会場でスマートフォンの画面をタップしてアーティストに投げ銭することが可能。
あなたが送ったYELLはライブ中スクリーン上でカウントされる。
会場にいるオーディエンスがタップすることでそのYELLが増えていく仕組みだ。
例えば僕がイベントに参加した際ヒップポップバンドのP.O.Pのライブ中に表示された”21885″は、会場のファンによって”21885YELL”投げ銭されたことを表している。
この”21885YELL”はP.O.Pに対するサポートになり、彼らの音楽活動のために使われる。このように、Muserが主催するライブに足を運び、YELLを送ることであなたが好きなアーティストをよりダイレクトに支援することができるわけだ。
YELLを送ったらどうなるの?
投げ銭的な感覚でライブ中にYELLを送ってアーティストを応援できる。
「じゃあYELLを送ったら何が起こるの?ただ数字が加算されていくだけ?それでは従来の投げ銭と変わらないじゃん。」と感じるかもしれない。
もちろん、ただの投げ銭ではない。YELLを通じてアーティストを応援すれば、あなたにもお礼が返ってくるのだ。
①ポテンシャルカードがもらえる
Muserにはアーティストごとに「ポテンシャルカード」というデジタルカードが用意されている。
どのアーティストもポテンシャルカードの価値は500YELLからスタート。ライブ中に500YELL送るとポテンシャルカードがもらえる。別途購入することも可能だ。
アーティストの人気が上がればカードの価値も変動する。人気が出れば出るほど必要なYELL数が上がる。言うなれば価値が変動する会員カードみたいなもので、所有者限定の特典を受けることができる仕組みだ。
もちろんアーティストごとに特典は異なる。僕が行ったライブではP.O.Pのポテンシャルカードをゲットして、メンバーに見せたらビールを奢ってもらえる、なんていう特典があった。もしかするとカード所有者限定のライブや、カード所有者限定でアーティストとの交流会、なんていう特典が今後出てくるかもしれない。
また、「カードマーケット」という機能がある。 これは、ライブ中以外にもMUSERに参加したアーティストのでもポテンシャルカードをゲットして、活動を応援することができる機能だ。 将来的にはWEB上でファン同士で交換することもできる予定のようで、トレーディングカード的にコレクトするのも面白そうだ。
②ライブの演出が豪華になる
YELLが送られると演出が豪華になる。基本的には1タップ1YELLだけど、まとめてYELLを送ることができる。
500YELL ~ 10000 YELLまで。「こんなたくさんYELL送る人なんているのかな?」なんて思っていたけど、思ったよりも「Fantastic!」や「Great!」の文字をたくさん見た。
例えば「500YELL」をまとめて送れば「Good!」という文字がアーティスト背後のスクリーンに映し出される。エフェクトがついて表示されるのでついスクリーンを観てしまうし、会場も盛り上がる。
③ライブ中にコメントを送ることができる
YELLを送るだけでなく、ライブ中にコメントを送ることができる。思ったことや楽しい気持ち、アーティストに聞きたいことや応援のメッセージ、なんでも送ることができる。
ライブ中にだけ表示される画面がこちら。「コメントを送る」欄にメッセージを入力するだけ。ライブ中にスクリーンに映し出されるので、他のお客さんがライブに対してどう感じているのかリアルタイムで共有できる。
大比良瑞希さんのライブ中にはコメントを利用し、お客さんから質問を募集。MC中に「Q&Aコーナー」を開催したりしていた。会場にいるお客さんも他の人がどんなコメントしているのか手元のスマートフォンでチェックできる。
ファンはアーティストに対して聞きたい事や感じることをつたえることができる。アーティスト側も、ライブ中や終演後にコメントをチェックして次回のライブの演出やセットリストに反映させる、という使い方もできそうだ。
Muser主催のShowcase(ライブイベント)に行ってきた!
Muserという「アーティストを応援するための新しいプラットフォーム」について理解いただけたかと思う。では実際にライブ中どのように生かされるのか気になるところ。
「なんとなく理解できたけど、具体的なイメージが浮かばない…」と思った僕は、先日ライブに行ってきた。
まずはMuserに会員登録。チケット購入のためにはMuserへの登録が不可欠だ。
メールアドレスとパスワード設定のみなので会員登録自体はとても簡単。
登録が完了したらチケットの購入。クレジットカードで決済がなされる。当日はスマホの画面を見せれば入場できるので、チケットを家に忘れるみたいはうっかりミスはない。
それにしても素敵な3バンドが観れるのにチケット代1500円は安い。もちろん、会場内でのYELLによる投げ銭でカバーしているのだろうけど。
ライブがスタート!
僕が参加したライブイベントは渋谷 LOUNGE NEOで開催された。フロアライブでアーティストとの距離感が近い。
事前購入したデジタルチケットを受付に見せて会場に入る。他のライブイベント同様、ドリンク代は別途かかるので注意しよう。
受付で700YELLが無料でもらえるQRコードが配られていた。
僕が参加したライブで6回目の開催だったようなので、まずはライブを観に来たお客さんにYELLの使い方を覚えてもらおう!という意図なのだろう。裏面のQRコードを読み取ってささっと追加できた。ありがたい。
僕が到着した頃にはまだまだまばらだったお客さんも開演が近づいてくるに連れて満員に。
「中に入れないお客様もいるので詰めてください!」なんてアナウンスが入る場面もあった。正直な所、満員になるまで集客があるとは思っていなかったので驚かされた。
そして開演時間。MCのScarf氏がサービスについての説明からスタート。僕も事前にある程度予習したきたとはいえ、サービスの全容がいまいち理解できていなかった。このようにキチッと楽しみ方をガイトしてもらえてたおかげでスッとライブに入っていくことができた。
まずはYELLの使い方から。ライブ中に手元のスマートフォン画面をタップすることでYELLを送ることができることが改めて説明された。3ステップでわかりやすく使い方をおさらい。
さらに先ほど触れた700YELLがQRコードについても説明があった。追加した700YELLはMuserからのプレゼントだ。しっかり追加してアーティストにYELLを送ろう。
さらに!この日のトップバッターだったP.O.PとMuserの特別企画”YELL for BEER“についても説明が。会場のお客さんが送るYELLが1万を越えるたびに、10本の瓶ビールが振舞われるというもの。なんて素晴らしい企画なんだ…
P.O.P
そうこうしているうちにP.O.Pのライブがスタート。双子の上鈴木タカヒロ(MC・兄)、上鈴木伯周(MC・弟)と、さいとうりょうじ(ギタリスト・作曲家)の3人によるラップグループだ。
ビールへの愛を歌った曲があるぐらいビールが大好きな調子のいいバンド。会場の盛り上げ方もめちゃくちゃうまくって、すぐに会場の空気をものにしていた。
YELLの伸び方もイジリながら、軽快でクールなラップと演奏で会場を盛り上げるP.O.P。初めて観たP.O.Pのライブにテンションを上がり「10000YELLを越えるとビールが振舞われるんだよね、どんどん送らなきゃ!」と手元のスマートフォンでYELLを送る。
すると2曲め途中ぐらいで早速10000YELLを越える。Muserのスタッフの方がビール瓶が入ったダンボールを抱えて会場内をビールを配りに歩き回る。
お分かりだろうか、会場のほとんどのお客さんがビールを片手にライブを観ている。
この辺りから「会場の一体感」が感じられるようになった。
もしこれが普通の投げ銭ライブなら、「正確に10000円超えたらビールを配る!」なんてことをリアルタイムではできない。お客さんも手元から自分が出したいだけの金額を財布から取り出して、ステージ上にある箱に投げ入れるなんてことも案外難しい。他のお客さんの目があったり、目立ってしまって気まずさを感じてしまうだろう。
Muser(@muser_link)のライブにお呼ばれしてるんですけど、P.O.Pのライブ中にYellという投げ銭が1万を超えるたびにビールが振舞われてサイコーです pic.twitter.com/ax0jZXwMzG
— Sleepyhead | 音楽のブログ (@SleepyHead_blog) 2019年6月6日
でも、MuserならYELLをスマートフォンからタップして送るだけ。簡単にライブイベントに「参加」できる。「アーティストとファン」の関係が少し崩れて、会場全体に同じイベントに参加している「共犯感」が出てくる。
YELLやポテンシャルカードをどう使うかはアーティスト次第だけど、使い方次第では会場を盛り上げ、ファンとの距離感を縮める良いきっかけとして活用できるんじゃないかと思った。
トップバッターとして100点満点のライブを披露したP.O.Pのライブはただただ楽しかった。もしかすると、この日出演したアーティストの中で一番Muserの仕組みをうまく使っていたのかもしれない。
最後の曲ではEmeraldのボーカルである中野陽介氏がゲストで登場。ともに会場を盛り上げ次のアーティストに繋いだ。
大比良瑞希
2番手はシンガーソングライター・トラックメイカーの大比良瑞希だ。
フジロックやサマーソニック、りんご音楽祭など大型フェスにも出演し、tofubeatsなどの作品にも参加する実力派のミュージシャン。個人的には去年一度ライブを観たことがあり、今回またライブを観れることを楽しみにしていた。
個人的には”アロエの花“が好き。ぜひチェックしてみてほしい。
Muserの仕組みを使った企画として、MC中の”Q&A”タイムが催された。上でも触れたようにYELLを使ってアーティストにコメントを送ることができる。
今夜のライブは、
渋谷LOUNGE NEO🦑6人Set久々で楽しみ!
20:30から40min🕺
謎のQ&Aコーナーもあるし、
デジタル投げ銭楽しんで👐7/1ワンマンのオリジナルチケットも会場限定で発売中です。
もうあとわずか!
チェックしてねー☺️💭ACT:Emerald,大比良瑞希,P.O.P
当日:2000yen pic.twitter.com/TGEbSg7SN7— 大比良瑞希 (@mimimizukin) 2019年6月6日
「何歳からギターを弾いていますか?」や「ビールは何が好きですか?」など、会場にいるお客さんから質問が入る。
MCタイムが始まると、イベント全体の進行役であるScarf氏が大比良瑞希さんに質問を投げかける。
ただアーティストが話すことをファンが聴く時間だったMCタイムを、相互的なコミュニケーションに変えることができることがMuserの良いところだろう。これもファンの「参加意識」が高まる良い仕組みだと思う。
アーティストが手拍子を促しても、シンガロングをするところでも、普段気後れしてうまく会場のノリに乗り切れないお客さんも多いと思う。が、MuserのYELLを送る仕組みやリアルタイムのコメントなどでお客さんの「参加意識」が高まり、会場での「ノリ」が良くなるはずだ。
Emerald
このイベントのトリはEmerald。”Pop music発 Black Music経由 Billboard/Blue Note行”とあるように、ジャズやソウル、シティーポップなどの要素を「ポップ・ミュージック」として表現する。
ボーカルの中野陽介氏の透き通っていながら芯の通った歌声がグッと胸に刺さる素晴らしいバンドだ。
前々から名前は知っていて、各方面で話題となっていたこともありEmeraldのライブを一度見てみたいと思っていた。
Emeraldのライブの印象はストイック。MuserのYELLについての特典があるわけでも”Q&A”コーナーがあったわけではない。
MC中にも「こんな(Muserのイベント)なのにセットリストをぎちぎちに組んだ」といっていたぐらい「単純な音楽とパフォーマンスの良さ」で勝負したバンドだった。
もちろん会場のお客さんもYELLの使い方をすっかり覚えて、各々が「かっこいい!」「最高!」と思ったタイミングでYELLを送っていた。最終的には50000YELLを超えていたと思う。
個人的には”東京“という曲が印象に強く残っている。
基本的に「夜」に聴く音楽というイメージをEmeraldに対して持っているのだけど、特に”東京“はエモーショナルになりたい夜に聴きたい。夜の東京を一人散歩しながら聴くといいかもしれない。
【セットリスト】
2019.6.6(Thu)@渋谷LOUNGE NEO
「MUSER SHOWCASE @ LOUNGE NEO」
1. Heartbeat
2. Holiday
3. ムーンライト
4. JOY
5. step out
6. 東京
7. 黎明 feat. 前田拓也 a.k.a. Scarf @coisaa_japan次回は明日6/8(土)、名古屋CLUB UPSETです!
photo by ryutaseki pic.twitter.com/yXcvU0lrgL
— Emerald(エメラルド) (@Emerald_info_) 2019年6月7日
もちろんMuserの仕組みをフル活用していく相互的なコミュニケーションがあるライブも素敵だけど、Emeraldの音楽性を考えると「お客さんにじっくり聴かせる」ことがその音楽の良さを伝える一番の方法だったのだろう。
YELLの伸びも他のアーティスト同様しっかり伸びていたし、僕も特典がないからと言ってスマートフォンのタップをやめなかった。
それぞれのアーティストのキャラクターや音楽性、お客さんの層など様々な要素次第でMuserの使い方は無限にあるのだろうな、と思わされたライブだった。
Muserはコミュニケーションの新しいカタチ
実際にMuserというアーティスト応援のためのプラットフォームを使ってみて「アーティストとファンとの関係性がアップデートされる」のでは?と思った。
YELLという投げ銭の仕組みがベースにあるのだけど、単なる投げ銭では終わらない。従来の投げ銭はパフォーマンスの良さに応じて観客が払いたいだけのお金をアーティストに投げていた。
Muserでも従来の投げ銭の仕組みはしっかり受け継がれている。中でも以下の3点が魅力的な点だと思う。
・投げ銭のハードルが従来よりもかなり下がった
・気軽に投げ銭(YELL)を送ることで、お客さんのライブに対する参加意識が高まる
・ポテンシャルカードなどの仕組みで投げ銭したアーティストを継続して応援できる
財布からお金を取り出して投げ銭するより、手元のスマートフォンでタッチした方が明らかに簡単でシンプルだ。
しかもYELLを送れば会場のスクリーンに演出として反映される。「自分がライブに参加している」意識が高まって、ライブをより楽しめるような心構えが作られると感じた。
またライブが終わった後にはポテンシャルカードというデジタルカードを所有することができる。特典に関しては今後アップデートされていくだろうけど「ポテンシャルカードを所有して、好きなアーティストを応援したい!」と思える魅力的な特典が出てくるはずだ。
個人的には「好きなアーティストと飲みいける!」なんかあったらめちゃくちゃ嬉しいし「カード所有者しか参加できないライブ」なんてものが開催されたら濃度の濃いファンが集まる素敵な空間が演出されるだろう。
ポテンシャルカードはある意味ファンクラブの「会員証」的な役割を果たしていく印象を受けた。まだまだスタートしたばかりだから、どのアーティストのポテンシャルカードもそれほど費用をかけずにゲットすることができる。
Muserでアーティストを応援しよう!
実際にライブに足を運び、Muserを使ってみたけれど「アーティストを応援する新しいカタチ」になりうる存在だと感じた。応援することで生まれる相互的なコミュニケーションも楽しいし、今後どのような発展をしていくのか個人的に楽しみにしている。
とはいえ、記事を読んだだければサービスの面白さ・ライブ中の一体感を感じることは難しいだろう。
直近では6月19日に下北沢モナレコードでライブイベント”Showcase“が開催される。勢いのある若手バンドのライブパフォーマンスを会場で体感し、Muserで応援してみよう。
7月11日には今回と同じ会場渋谷LOUNGE NEOでライブが開催される。個人的にはTHREE1989のライブがアツい。
登録はこちらから。
参考 登録Muser記事を見返してもらえれば登録方法やMuserの使い方を予習できるので、是非とも登録して楽しんでほしい。
僕も個人的にまたライブに行こうと思えたぐらい楽しい空間だった。応援したいアーティストが出演する時にライブを観に行くのもいいし、かっこいい最近の若手バンドを探しに行くのもいいだろう。
僕もきっとまたライブに顔を出すので、ぜひライブ会場で一緒にアーティストを応援しよう。