先日イギリスのエレクトロポップバンドであるMetronomy(メトロノミー)がニューアルバム”Metronomy Forever“のリリースを発表した。
Metronomyとは、ボーカルのJoseph Mount(ジョセフ・マウント)を中心にエレクトロとバンドサウンドのいいバランスを実現したエレクトロポップバンドである。僕個人としては思い入れがめちゃくちゃ強い。音楽を本格的に好きになり始めた2000年代後半に出会い、今日に到るまで愛聴しているお気に入りのバンドである。
日本での認知というと、根強いファンはいるのものの他のエレクトロバンドに比べるとイマイチ。サマーソニックで2度の来日公演を果たしているが、単独での来日はない。
新しいアルバムが出るということは、新しいツアーをまわるに決まっている。そうなった時に「日本じゃあんまり集客見込めないし…ちょっとツアーまわるのは難しいね」なんて言われてしまうと思うと悲しい。
という訳で、日本でも屈指の「Metronomyファン」である僕が彼らの音楽を聴いたことなくても「いいじゃん」と思える10曲を紹介する。エレクトロ、とは言ったのものポップでファニーなバンドなのできっとすんなり耳に入ってくるはずだ。
Metronomyはこんなバンド
改めてMetronomyを紹介したい。
元々はバンドの中心人物であるJoseph Mount(ジョセフ・マウント)がまだ両親と暮らしていた10代の頃に始めたベットルームプロジェクトである。
現在はキーボードやギター、コーラスを務めるOscar Cash(オスカー・キャッシュ 中央上)、ドラムのAnna Prior(アナ・プライヤー 右)、ベースのOlugbenga Adelekan(オルグベガン・アデレカン 左)、そしてギター・キーボードのMichael Lovett(マイケル・ラベット 左から二番目)の5人で活動している。
元々はベットルームプロジェクトというぐらいなので、宅録のエレクトロなサウンドが中心だったのだが2000年代後半からニューレイブ的なサウンドに切り替わる。当時Klaxons(クラクソンズ)などのニューレイブシーンを盛り上げたバンドともに人気を獲得し始める。
現在はエレクトロポップやサイケデリックなサウンドを、バンドの良さを活かしながら表現し続ける素敵なバンドである。ベースラインのファンキーさや、バンドメンバー全員のレベルの高いコーラスワーク、そしてクスッと笑えるライブの演出など、サウンドのかっこよさとお茶目な一面を保っているところも僕が好きなポイントだ。
実はMetronomyはA.P.Cの17AWのショーミュージックも担当している。ファッション好きな人ならもしかすると知っているかもしれない。
そんなクールで愉快なエレクトロポップバンド、Metronomyのおすすめ10曲を紹介していきたい。
おすすめの曲① The Bay
Metronomyといえば”The Bay“である。もっとも有名な曲だと思う。
表拍のシンプルなベースラインと、この曲を象徴するシンセサイザーのフレーズから聴くひとの心を掴む。Bメロに差し掛かると美しいコーラスワーク。サビの突き抜けるような気持ちの良いメロディー。
しかも適度なBPMがゆらゆら踊らせてくれる。曲終盤にはシンプルながら、エレクトロな曲の中でひときわ存在感を放つギターソロも登場する。特にライブ映像で見るとかっこいいので是非こちらもチェックしてみてほしい。
正直なところ、このライブ映像が好きすぎて何回観たかもはやわからないぐらいリピートしている。The Bayのライブバージョンではこれがベスト。ライブアレンジもシンプルだけどアクセントが効いている。
おすすめの曲② A Thing For Me
実は現在の5人体制にになる前に3人で活動していた時期がある。そのころにリリースした”Nights Out”というアルバムが彼らを人気バンド仕立てたのだが、そのアルバムに収録された最高な曲が”A Thing For Me“だ。
シンセサイザーの音やメロディーがなんとなくファニーで、間の抜けたゆるさがある曲だ。楽器の構成はシンプルながらもしっかり踊れるグルーヴ。
僕がなぜ彼らのことを「ファニー」というか。ぜひ以下のライブ映像で確かめてほしい。最後のサビ前のバンドメンバーのフリに注目だ。
おすすめの曲③ Heartbreaker
名盤である”Nights Out”からもう一曲。”Heartbreaker“はいわゆる失恋の歌で「I heard she broke your heart again (また彼女がお前を降ったって聞いたよ)」と歌い続ける。
イントロのベースラインが複雑で少し「気持ち悪い」居心地の悪さを感じるのだけど、それが印象的でもある。基本的にはコード進行は同じで、フレーズのリピートが心地いい。サビと同じメロディーでなる口笛もいい味を出している。
Metronomyといえばやっぱりライブが楽しい。ラストのサビ前に遠くを観ながらメンバー全員が敬礼するのだけど、いつか僕も彼らのライブで一緒に敬礼したい。
おすすめの曲④ The Look
やっぱりこの曲“The Look”も外せない。この曲は4人体制(当時Michael Lovettはサポート)の曲で、先ほど紹介したThe Bayと同じアルバムに収録されている。キーボードのベーシックなフレーズと、その間に入り込んでくる点を打つようなベースとの掛け合いが心地いい。
The Bayと人気を二分する曲だと僕は思う。個人的にはめちゃくちゃ好きな曲だ。
おすすめの曲⑤ 16 Beats
アルバム”Summer 08“に収録された”16 Beat“。ドラムのハイハットが16ビートを刻み、シンセベースが印象的なフレーズをリピートすることでいいグルーヴが生まれる。
この映像はフランスのシャルルドゴール空港の荷物受け取りの区画で撮影されており、演奏に合わせてダンサーが踊る。コンテンポラリーダンス的な不規則で人を惹きつける雰囲気が面白い。
個人的な思い出だが、先日フランスに行ったときにまさにこの場所で荷物を受け取った時めちゃくちゃテンションが上がった。一緒に行った友人とはその喜びを分かち合えなかったんだけど。
おすすめの曲⑥ Monstrous
アルバム”Love Letters“の3曲目である”Monstrous“。どことなく荘厳なシンセサイザーとエレクトロピアノのサウンドと、シンプルなパーカッションのリズムで淡々と進む曲だ。
2分10秒を過ぎたあたりからCメロ的なセクションに入るのだけど”And it could wait, Wait for the after show”と歌うJoseph Mountのちょっとか弱目な裏声のメロディーがエモーショナル。僕のお気に入りだ。
おすすめの曲⑦ Love Letters
またもやアルバム”Love Letters“から、リードトラックである”Love Letters”を紹介したい。
何と言ってもMVがいい。70年~80年代?的な手作り感溢れるセットの中でこの上なく楽しそうに演奏するメンバー。Oscar Cashがキレッキレでタンバリンを叩き続けるあたりも要注目だ。
街を走る車や、レコーディングスタジオをハリボテで再現し、くり抜いた穴からメンバーが演奏するのが見えるMVなのだけど、特に車から顔を出す彼らの様子がすき。
おすすめの曲⑧ Reservoir
こちらもアルバム”Love Letters“に収録された曲である。
”Hearbreaker”や”A Thing For Me“的な3人時代のMetronomyを思わせる打ち込みっぽいうドラムと、なんとなくコミカルなシンセサイザーのフレーズが可愛らしい。
“Reservoir”の本領が発揮されるのはライブだ。二人一組でシンセサイザーの前に立って演奏するスタイルが演出として面白い。イントロでOlugbenga Adelekan(ベース)とMichael Lovett(シンセサイザー)が指を鳴らしながら腕を振りまくる(?)んだけど、Metronomyはライブ演出にこだわるバンドと言われる所以はここにある。ぜひチェックしてみてほしい。
打ち込みのドラムのテンポ早く設定し過ぎてやべえな〜と言いながら曲をスタートしたのはいいものの、二番に入るあたりで音が出なくなって困惑するゆるゆるなKEXPのライブもお見逃しなく。
おすすめの曲⑨ Old School
こちらは2016年リリースのアルバム”Summer 08“のリードトラックである“Old School”である。
打ち込みっぽいドラムパターンに、生音のブリブリしたベースのベースがアクセントになっている。金物のパーカッションも効いている。基本的には同じパターンのリピートだけど、シンセサイザーやスクラッチやFX的な効果音が重なり構成される曲はどことなくテクノやヒップポップ的なアプローチを感じさせる。
おすすめの曲⑩ Salted Caramel Ice Cream
そして最後の曲は”Salted Caramel Ice Cream”だ。9月13日にニューアルバム”Metronomy Forever“をリリースすることが発表され、”Salted Caramel Ice Cream”が先行でMVと共に先行公開されている。
やはりMetronomyらしいコミカルで楽しいエレクトロポップという雰囲気で、ついつい踊りだしたくなる軽快なビートが癖になる。
MVのストーリーとメンバーのわざとらしい芝居もクスッと笑えて僕は好みだった。キーボードのOscar CashとRodneyという青くて可愛いかどうかよくわからないキャラクターが構えるアイスクリーム屋が、その向かいにオープンする今っぽいライバルのアイスクリーム屋に対抗するべくSalted Caramel Ice Creamのレシピを編み出す、といったもの。
そのライバルはドラムの紅一点Anna Priorとギター・キーボードのMichael Lovettなんだけど、最後にはお互いのアイスを交換して「そっちも美味しいじゃん!」と和解してみんなで踊り出す。なんてベタなストーリーなんだと思うけれど、このありきたりで大げさな演技がコミカルでMetronomyらしい。
新しいアルバムのリリースがより楽しみになる一曲だ。
Metronomyは最高なバンドだ
僕がどれだけMetronomyが好きか伝われば幸いだ。さらにこの記事で紹介した曲は全くMetronomyを知らなくってもすんなり聴ける曲ばかりなので、是非とも全く知らなかったとしても一度聴いてみてほしい。
今回紹介した曲は以下のプレイリストで聴くことができる。ぜひライブラリに追加をして聴いてみて。