僕の頭の中には春が来ると聴きたくなるアルバムがある。音楽が好きなあなたも似たよなアルバムのストックが頭の中にあると思う。
卒業と入学、異動や転職、何かと変化の多い季節だし、変化の当事者でなくても「何か新しいことが始まる予感」みたいな感覚が無意識に降りてくる。そんな絶妙に不安と期待が入り混じった感情のお供として聴くアルバムを紹介したい。
こういった「季節に紐づくアルバム」って大体は個人的な思い出や思い入れに寄るのだけど、僕が今回おすすめしたいアルバムもそうだ。結局は個人的な「春」の思い出から引っ張りだしてくるしかない。
一つ「春に聴きたくなる」アルバムの定義をはっきりさせておくとすれば「冬の間は迷わず電車に駆け込んで帰っていた帰路を、あえて一駅前で降りて散歩しながら聴きたくなる」ような音楽だ。ちょっと長いけど、きっとお分かりいただけると思う。
1. Hazel English “Just Give In / Never Going Home”
まずはオーストラリア出身で、現在はアメリカで活動する女性SSWであるHazel English(ヘイゼル イングリッシュ)の”Just Give In / Never Going Home”だ。
レトロ・ポップなんて言われるシンプルな楽器構成と、どことなくノスタルジックな歌声が魅力。どの曲も適度なテンポで、ポップで耳馴染みのいいメロディーが心地いい。
特にアルバムタイトルにもなっている“Never Going Home”がおすすめ。春がやってきた明るい朝にぜひ。
2. Fazedaze “Morning Side”
ニュージーランド出身の女性SSWであるFazerdazeの”Morningside“も春にぴったりだ。特にLucky Girlはいい。僕はラッキーでもガールでもないけれど、聴いているうちに“I know I’m a lucky girl“と思えてくる。
MVもFazerdazeことAmelia Murry自身がプロデュースした可愛らしいコラージュっぽい仕上がり。一昨年の春にFazerdazeを見つけて、リピートしていたのが確か春ぐらいだった気がする。アーティストを発見してたくさん聴いた時期が春なら、その後「春に聴きたくなる」曲として認識するのかもしれない。
Fazerdazeについては以前書いたこちらの記事に詳しい。ぜひ読んでみて。
【Music】NZの宅録ベッドルームプロジェクト、Fazerdazeが良すぎるのでみんなに聴いてほしい3.毛皮のマリーズ “ティン・パン・アレイ”
毛皮のマリーズ”ティン・パン・アレイ”は紛れもない名盤なのだけど、溢れんばかりの多幸感が待ち望んでいた春って感じがしてついつい聴いてしまう。
それまではパンクロックやグラムロックなアンダーグラウンドなバンドというイメージだったのだけど、このアルバムでは、ビックバンドみたいな編成でとにかくハッピーなメロディーがぐっと押し寄せてくる
まぁ行ってしまえばコンセプトアルバムみたいな位置付けではあるのだけど、ボーカルの志磨遼平のミュージシャンとしての方向性が見えた作品だったかなぁと思う。
なぜこのアルバムを選んだかというと、大学生の頃に京都の街を歩きながらよく聴いていた思い出がフラッシュバックしてエモーショナルになるから。乗降者がほとんどいない駅で敢えて降りて、ベンチに座ってこのアルバムを聴きながら本を読んでいたことをいつも思い出す。ひねくれ者である。
4. ent “Welcome Stranger”
このアルバムは個人的思い入れが強すぎて「春」っぽさが特別ある作品ではないのだけど、僕にとっては「春」に聴きたいアルバムなのでピックアップした。
ストレイテナーのギターボーカルとして活躍するホリエアツシ氏のソロ名義であるentのファーストアルバム”Welcome Stranger”である。
彼がストレイテナーから離れて宅録したアルバムは、彼の音楽性の広さをこれでもかというぐらい見せつけられる。宅録インディー感が強く、ストレイテナーでのニュアンスを端々に感じさせる。一方で、ストレイテナーではできないホリエアツシ氏のパーソナルな音楽性が感じられる。シンセサイザーの使い方やノイズのサンプリング、囁くようなボーカル、ストレスフリーで聴ける穏やかな雰囲気が春にマッチしているなぁと僕は思う。
個人的な思い入れ、というのはこの作品がリリースされたのが2009年。高校を卒業し、大学生になる前の3月にひたすらリピートしていたため、このアルバムに「不安と期待の春」のイメージが染み込んでいるわけだ。
ゆったりしたチルタイムのBGMに是非とも。
5. Vulfpeck “The Beautiful Game”
残すはミニマルファンクバンドであるVulfpeck(ヴルフペック)の”The Beautiful Game“だ。
ファンクなリズムはグルーブ、各楽器のテクニックは折り紙つき。とにかくベースのフレーズがタイトでついつい聴き入ってしまう。
一方で、とっつきにくい(と、思いかもしれない)ジャンルである「ファンク」を楽しみやすい「ポップさ」や「楽しさ」みたいなものが感じられるのも特徴だ。
特にこの”Animal Spirits”なんて最高。イントロの「明るくて晴れた何かが始まりそうな春の朝」感がたまらない。
もともと好きだったVulfpeckだけどあんまり春のイメージがなかった。でも改めてVulfpeckの”The Beautiful Game”を聴いていると「なんだか身体を揺らしたくなる楽しいアルバムだな!春やん!」となったのでここでピックアップしてみた。
楽しい気分で身体を揺らしたいあなたはぜひともライブラリに加えてみて欲しい。
プレイリストにまとめた!
全部聴くのはちょっと億劫だなぁ、なんて人はこちらのプレイリストからつまみ食いしてみて欲しい。
僕のオススメの曲を2曲ずつそれぞれのアルバムから引っ張ってきた。きっと春に聴きたくなる、出かけたくなる曲が揃っている。