僕は奈良県出身だ。
多分あなたが「奈良県」という言葉から想像することといえば「東大寺の大仏」や「奈良公園のシカ」などだろう。もちろんそれらの文化財だって奈良の誇りであり、僕が東京に移り住んだあとでも奈良のことを気にかける理由だ。
でも奈良には素晴らしい音楽だって生まれている。あまりイメージがないかもしれないけれど、奈良出身の素晴らしいミュージシャンはたくさんいる。今回ご紹介するのは、奈良を拠点に活動する3ピースロックバンド、LOSTAGE(ロストエイジ)だ。
LOSTAGE(ロストエイジ)はどんなバンド?
LOSTAGEは五味岳久(Vo / Ba)と五味拓人(Gt)、岩城智和(Dr)からなる3ピースバンド。2001年に奈良で結成、当初は4ピースバンドだったけれど2010年ごろに現在の体制に落ち着いている。
自主イベントの「生活」を毎年実施していて、ストレイテナーや同じ関西に拠点を置くバンドである8otto(オットー)などを招いて成功させていたり。
既存の音楽ビジネスからの脱却
また音楽ビジネスのあり方について工夫を凝らすバンドでもある。2017年リリースの“In Dream”というアルバムリリースにあたり、通常の販売方法とは全く違ったやり方でCDを売ることにした。
作品の流通を外部に委託しない
JASRACその他著作権管理団体に著作権管理を委託しない
自分のやってる店以外の小売店で販売しない
配信でデータ販売しない
宣伝広告にお金を使わない
発売前のサンプル配布を行わない
MVを作らない
大手CDショップに商品が並ばず、LOSTAGEのライブ会場・自身が運営するレコード屋THROUT RECORDSの実店舗とオンラインショップのみ。
流通業者を通すとCDの売値の50%を持っていかれることもある。5000枚を流通を通して販売する粗利と、自分の手の届く範囲で2500枚販売する粗利は対して変わらない。ゆえに「流通を介さない」という選択が生まれているわけだ。
敢えてMVを作らない
さらに特筆するべきは「MV」を作らない、という点。僕自身もそうなのだけど、友達にいい音楽を教えたいときにはYouTubeのリンクをラインで送ったり、このようにブログで紹介する。
しかし敢えて「CDやレコードで再生するときの感覚を大事にしてほしい」という意味で作らなかった。予算的な問題もあったようだけれど、とても勇気のある決断だったんじゃないかと思う。
ちなみにこのブログで紹介しているMVは8ottoのベースであるToraさんが撮った”Unofficial MV”だ。関西の音楽を支える2バンドのつながりが見えて暖かい気持ちになる。
そんなインディペンダントな奈良の誇りであるLOSTAGEの曲から”ポケットの中で“をあなたに聴いてほしい。
あなたの背中をそっと押してくれる名曲 “ポケットの中で”
今回紹介する曲は”ポケットの中で“という曲。
先ほど特別な方法でリリースされたアルバム“In Dream”に収録されている。
先にも触れたが、8ottoのベースToraさんが撮影したMVだ。これはTHROUT RECORDSという五味さん自身が奈良で運営しているレコードショップの目の前。常連客や五味さんが仲良く話しているかと思うと、近所のおじさんがふらっと話にやってくる。レコード屋をめぐる人々の日常を垣間見える気がして、気持ちがほっこりする。
ふっと「私も頑張ろう」と思える曲
YouTubeのコメント欄には「頑張れと一言も言ってないのに頑張ろうと思える唄を歌ってくれる。それがLOSTAGEの唄。」とある。本当にその通りだ。
歌詞の内容はとても抽象的ではあるのだけれど、心にぐっと刺さる。最初のAメロの歌詞が一番好きだ。
後悔が燃え上がる頃 僕の両手はいつも 上着のポケットの中
なんだっけ?思い出せず 記憶を取り出して 指でかき混ぜてる
曲全体の雰囲気を取っても、日が沈みゆくようなエンディング感がある一方で、また日が昇るような希望を感じる。
確かに直接的に誰かを応援するような歌詞を書いているわけでもないし、そういったメッセージを発信するバンドでもない。でもこういった悲しげなトーンの曲でも、聴いている人に「希望」みたいなものを感じさせる「暖かさ」があると僕は思う。
苦境に立たされている人に聴いてほしい
きっと彼らが本当に音楽を届ける方法にこだわり、LOSTAGEの音楽を届ける仕組みを整えるために大きなしがらみと戦ったのだろう、とイメージしながらこの曲を聴くと「俺もしがらみに負けないで頑張ってみようかな」なんて思えてくる。
今苦境に立たされている、踏ん張らなければならない人にとって、言葉にならないけれどぐっと心に刺さる「メッセージ」がこの曲から感じてもらえるはずだ。
LOSTAGEを気に入ったあなたにはこの記事を!
同じく関西の音楽シーン、ひいては日本全体の音楽レベルをぐいぐい引き上げるレコード屋Flake Recordsについてもぜひ知っておいてほしい。きっとあなたが聴く音楽の幅を広げてくれるはずだ。