2019年8月17日土曜日、夜中の幕張メッセでNF in MIDNIGHT SONICが開催された。サマーソニック1日目と2日目の間の深夜に開催されたサカナクションがディレクションしたフェスだ。
サカナクションファンに捧ぐ。NF in MIDNIGHT SONICで観て欲しいバンドはこれだ!その豪華なラインナップと何より今をときめくサカナクションがでるフェスだと言うこともあり、初販のチケットはすぐ完売した。僕はなんとか再販のチケットを2枚ゲットして友人と参加することができた。
結論から言うと、とても楽しく踊れる素敵なフェスだった。
サカナクションのことは代表曲ぐらいしか知らないミーハーだったが、こだわりを感じさせる素敵なライブ演出と繰り出される名曲たちのおかげでがっつり踊りまくることができた。そして予ねてからずっと観たかったWashed OutとBathsが観れたことは何よりテンションが上がった。
特にWashed Outはかれこれ7年ぐらい聴き続けているのに来日のタイミングを逃していたので、今まで溜め続けてきたWashed Outへの愛が爆発してしまった。とにかく最高なのだ。
「良いライブを観たら極力言葉にして残しておく」と言うのが僕のポリシーなので、僕が観たパフォーマンスが最高だったと言うことを記録しておきたいと思う。
シャウトするBaths
駅前で買ったビールを飲みつつ会場に向かい、想像の150%ぐらい長かった入場列に少し戸惑いながら幕張メッセに入るとすでにBathsのライブが始まっていた。
DJセットでの出演となったBaths。曲はもちろんチルな曲からテクノやエレクトロニカ的なアプローチのダンスミュージックまで音楽性の幅が広く楽しめるライブだった。
何よりステージ上でのBathsことWill Wiesenfeldが腕を振りまくるわ、身体をくねらせるわ、挙句にこれ以上のないぐらい全力のシャウトで客を盛り上げるわ、想像していたよりもエンターテイナーと言う印象だ。
何曲か新曲も演奏し、今後のリリースが楽しみになるBathsのパフォーマンスだった。
もっと観ていたかったAkfen
Bathsを見終えるとまたビールを買って飲み干した。余談だけど、今回のサマーソニックからほぼ全ての出店で電子マネーが使えるようになった。極論、モバイルSuicaさえあれば事足りてしまうのだ。ビールだってグッズだって現金の残額を必要がない。なんて素晴らしい。
ビールを買ってステージに戻ると次はAkufenだ。
正直なところAkufenはNF in MIDNIGHT SONICに行くと決めてから知ったアーティストだ。しかし、予習していると「なんで僕はこんな最高に踊れるアーティストをしらなかったんだ…」と、どハマりしてしまった。
テクノ・ハウス的なトリップ感がたまらない、四つ打ちのリズムに観客は踊りまくり。本当はもっと踊っていたかったのだけど、後半が微妙にサカナクションと被っている。後ろ髪を引かれつつ、依然最高なビートに身体を揺らしつつサカナクションのステージに移動した。
僕はサカナクションをナメていた
NF in MIDNIGHT SONICの主催者であるサカナクション。正直なところ「サカナクション、人気だけど有名な曲と昔聴いてたアルバム”セントレイ“の曲しか知らないんだよな…楽しめるのかな」なんて思っていた。
今や音楽にそんな詳しくない人すらサカナクションを知っているし、マスにがっつり向いたポップソングを作っているバンドなんていう穿った見方をしていたことも事実だ。要は僕はサカナクションを心のどこかでナメていたのである。
ところが、会場の照明が落ちいよいよライブが始まる瞬間聞き覚えのある音がなる。ディレイの掛かったシンセサイザーの音である。「アルクアラウンドや!!!」次の瞬間には僕は思いっきり手をあげて踊っていた。自分でもちょっと笑っちゃうぐらいミーハー的な反応だった。Bメロでハンドクラップしちゃってたし。
夜の踊り子では、小躍りしながら「ウォオオオ」と歌っていた。なんだ僕結構知ってるやん、と自分でツッコミを入れてしまった。
最後はもちろん新宝島である。このことには僕はサカナクションが大好きになっていた。サビしか知らない曲だったけど、全力で踊った。気がついたら「丁寧、丁寧、丁寧に〜」とシンガロングしていた。
あと歌メロをなぞるようなギターソロに心が懐かしくなった。90年代っぽい雰囲気を感じた。
VJなど「ライブ演出」へのこだわりが半端じゃないな、と言う印象だった。ステージ後方のスクリーンに投影するだけでなく、演者の前に巨大なメッシュのスクリーンを下ろして映像を投影していた。要はスクリーンと映像で演奏するバンドが見えない、と言う図式だ。本来であればバンドがメインであるはずなので、あまり観ない演出だ。大胆である。
どの曲か忘れてしまったのだけど、ステージ後方に設置された台から火が上がる演出もあった。B’zかよ…とツッコミを入れながらも、サカナクションがライブの演出にもつこだわりを垣間見た気がする。エンターテイナーだ。
待ちに待ったWashed Out
NF in MIDNIGHT SONICのチケット代およそ8500円は全てWashed Outのために支払ったと言っても過言じゃない。
チルウェーブと言う一大ジャンルを作り上げたパイオニアであり、その音楽性を常にアップデートしているミュージシャンである。
サカナクション終わりにリハーサルの様子を少し観たら”Soft“のイントロに使われているシンセサイザーの音が聴こえただけでテンションは爆上げである。
案の定1曲目は”Soft“である。音源では無いコンガのようなパーカッションが心地いい。幻想的なパッドの音と流れるようなリズムパターンが心地よく、加えて身体を横に揺らして踊りたくなるビートがたまらない。最高である。
そしてすかさず”Hard To Say Goodbye”だ。一昨年リリースされたアルバム”Mister Mellow“のリード曲である。
フィルターのかかった街のノイズと、特徴的なベースリフから始まるこの曲が大好きで一心不乱に踊った。MVをスクリーンに映し出していたVJ的な演出も彼らのパフォーマンスにマッチしていた。最高である。
何よりテンションが上がった瞬間は”Feel It All Around“から”Amor Fati“の繋ぎだ。Washed Outがチルウェーブという音楽ジャンルを作り出し、一大音楽ムーブメントに押し上げるきっかけになった”Feel It All Around“が生で聴けた。使われているコードは2つだけ。強烈なレイドバック感にチープなシンセサイザーのリフ、リバーブのかかった輪郭がぼやけたメロディ。これぞチルウェーブである。
「チルウェーブってなに!」というあなたはこちらの記事にまとめているので読んでみてほしい。
遊び疲れた後のチルアウトに。浮遊感に浸れる「チルウェーブ」の10曲。そして。彼らがより構築的な音楽でインディーシーンで頭角を表し、広く音楽ファンに知られるようになったアルバム”Within or Without”の代表曲”Amor Fati“が続く。
私的”真夏のチルのためのサマーチューン圧倒的一位”なので、夏が終わらないうちにあなたにも聴いてみてほしい。
“Feel It All Around“はメロディーというものや曲の構成自体が曖昧だった。イントロ、Aメロ、サビ、みたいなはっきりした役割が見えずらいのがチルウェーブ的と言えるかもしれない。しかし、“Amor Fati“はチルウェーブ的な音色に立脚しつつも、より構成が練られたであろう曲なのである。しかも踊れる。チルできる。最高である。
僕の好きな曲が続いてブチかまされたので恍惚の表情で踊りつつけていた。夜中、というかもはや早朝である4時の幕張でチルしながら踊り続けた。Washed Outは期待を裏切らなかった。僕のすきなWashed Outだった。
余談だけどWashed Outことアーネストグリーン氏がタンクトップ姿でよかった。彼はどこかお茶目なところがある。最高。
NF in MIDNIGHT SONICはいいイベントだったね
ずっとライブを観てみたかったアーティストをしっかり楽しめた。単独公演だと足を運ぶハードルが高いだろうけど、フェスなら気軽にライブを楽しむことができる。サカナクションなんて行きたくてもなかなか単独のチケット当たらなそうだし。
サカナクションは一番キャパの大きなステージでライブを行い、会場は超満員だった。対して同じ会場でパフォーマンスしたWashed Outは簡単に最前列まで行けるぐらいの観客数だった。もちろん日本での人気は圧倒的にサカナクションに軍配が上がるのだろう。でもサカナクションが好きな人の中に、NFをきっかけにWashed Outを知った人もいたはずだ。
ジャンルや国を超えていい音楽に触れる機会を作る、なんて綺麗事に聴こえるかもしれないがNF in MIDNIGHT SONICはきっとジャンルや国を超えた音楽ファンを繋げる役割を果たしたと僕は思う。もちろん大きな成果ではないかもしれないが。
個人的にはHostess Club Weekenderみたいな洋楽インディーフェス的な位置付けまで成長させてほしいイベントだ。来年もぜひみて見てみたいし、単独イベント化してほしいぐらい。