アメリカ、ニュージャージー州をベースに活動するシンガーソングライターであるLeslie Bear (レスリー・ベア)のプロジェクトであるLong Beardのニューアルバム“Means To Me”をご紹介。
2019年9月13日にリリースされたアルバム“Means To Me”はJapanese Breakfastのプロデュースも手がけるCraig Hendrixとの共同プロデュースで製作された作品だ。
透き通るエモーショナルな歌声と、ギターとドラム、ベースのオーセンティックなバンドサウンドがどこか懐かしく物悲しい”Means To Me”は2019年で一番のインディーロックサウンドと言っていい。
Long BearことLeslie Bearはこんな人
Leslie Bearは大学でコンピューターサイエンスの学位を取得し、そのまま会社勤めをしていた。
前作の“Sleepwalker”をリリースした当時は会社員として働きながら作品を完成させた。同僚がほとんど男性で、唯一仲の良い女性の同僚が会社をやめてしまい、「やっていける気がしないから私もやめよう!」と思い退職。ミュージシャンとして本格的に活動を始めた。ミュージシャンとして生きていく土台が固まるまで会社勤めをすることは意外ではない。が、コンピューターサイエンスを学んだインディーロックのミュージシャンというのは珍しい。趣味はゲームで大乱闘スマッシュブラザーズやStardew Valleyが好きだという。なんだか親近感が湧いてくる。
すでにブレイク寸前と言われているLong Beardだが、すでにJapanese BreakfastのフロントマンであるMichelle Zauner(ミシェル・ザウナー)にSlow Diveとのツアーのサポートアクトに誘われて共にツアーをまわったり、Snail Mailとも共演を果たしている。
ノスタルジックで映像的な作品
“Means To Me“は、イントロ的な役割を果たすアコースティックギターの音が郷愁をそそる“Countless”という曲から始まる。なんとも映画の挿入歌のようなエモを感じる。続く“Getting By”は本作のリードトラック的なポジションだ。スケールの大きい楽曲である。穏やかな田舎道を歩くような心が落ち着く穏やかさがあるのだけど、家族も友達も誰もいない場所を思わせる物悲しさが裏に流れている。
“Means To Me”はいい意味で曲の構成やアルバムを通しての抑揚が抑えられると僕は思う。淡々と自分一人でいることに対することに対する居心地の良さと、悲しさに向き合う心が表現されている。
もし心が疲れ切ってしまって何もしたくない時があったら、暗めの部屋で小さめの音量で“Means To Me“を流しておけば心が楽になるかもしれない。だぶんなんとなく悲しくなって泣いてしまうだろうけど、心が軽くなると思う。僕も辛くなったら“Means To Me”を聴くだろう。
サウンドとしてはミニマルな編成で、インディーロックバンドとしての強さが感じられる。シンプルな音色と、楽器で飾り付けしないむき出しの曲にLong Beardのどこまでも透き通るけど、どこか影のある美しい歌がスッと降りてくる。Leslie Bearの歌声とメロディを最大限活かすことができる楽曲に仕上がってると僕は感じる。Leslie Bearのギターサウンドも自在でディレイやエレクトロハーモニクスを使いつつ、シンプルさを保ちながらも随所にギターの音色を変化させアクセントを付けている。
ClairoやMen I Trust、No Vacationなど女性SSWや女性のフロントマンがとても強いシーンの中で、ひときわ存在感を放つLong Bear。きっと言っている間にブレイクするだろうから、今のうちにしっかり抑えておいてほしいインディーロックバンドだ。
Long Beardが好きな人にはこちらのアーティストもおすすめ



