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アマイワナ インタビュー。最新EP『恋せよ惑星』から紐解く表現への姿勢とドリーミーなサウンド。

京都出身のシンガー・ソングライターのアマイワナが2020年12月18日に2nd EP『恋せよ惑星』をリリースした。PIZZICATO FIVE(ピチカートファイブ)やStrawberry Switchblade(ストロベリー・スウィッチブレイド)などを意識した渋谷系やニューウェーブサウンドを基軸にしたサウンドは、シティーポップの様相でありつつも海外インディーシーンのドリームポップのアーティストと肩を並べても違和感がない。

音楽以外にも、昭和カルチャーにも明るい彼女は今年日本テレビの『今夜くらべてみました』で彼女の好きな昭和の音楽などの話を披露したり、Hotel She,によるオンライン演劇『泊まれる演劇 In Your Room ANOTHER DOOR』にも出演。音楽に留まらず表現の幅を広げる注目のアーティストだ。

そんなアマイワナにオンラインインタビューを実施。彼女の音楽的なルーツから先日リリースされたEP『恋する惑星』の裏側まで話を伺った。

一番最初に本当に音楽にハマったというか、最初にライブに行っ てカッコいいなと思ったのが、フジファブリックや、The SALOVERS、andymoriでした。

– いただいた音源を聞かせていただいたきました、素敵なドリームポップという印象でとても良かったです。まずはどういった音楽から影響を受けられたのか、そのルーツからお話をお伺いできたらなと思っています。

アマイワナ そうですね、一番最初に本当に音楽にハマったというか、最初にライブに行ってカッコいいなと思ったのが、フジファブリックやThe SALOVERS、andymoriでした。邦楽のロックバンドを小学校六年生から中学校、高校ぐらいの時は聴いていました。古い曲も好きなので、それこそ昭和歌謡も好きで中森明菜ちゃんとか松田聖子さんも聴きます。でもニューウェーブも好きで、P-MODELやPlasticsもサウンドとして自分の身になってるところもあるかもしれません。

フジファブリック『茜色の夕日』弾き語りカバーと歌詞のアマイ考察#1

 

– そういえばライブでPlasticsのカバーされてましたよね。YouTubeの動画でもおっしゃっていたかと思うのですが、フジファブリックの”茜色の夕日”が初めてカバーした曲だと思います。フジファブリックの影響で楽器としてはギターから始められんですか?

アマイワナ はい、ギターから始めました。中学三年生の十四歳の時に初めてライブをして、高校に入学するころに初めて曲を作り始めました。

今自分で曲作ってますけど、それこそ一緒に誰かと作ったりとか提供してもらった曲を歌ってみたりしたいなと思います。

アマイワナ-新生活【MV】

 

– その時はアコースティックでだったと思いますが、最新のEPでは結構エレクトロなエレクトロポップ的なきらきらした音楽の印象を受けました。サウンドの変遷があるなと思ったんですが、作曲のスタイルは最初の頃と今に変わってきたりしましたか?

アマイワナ そうですね。音楽始めた頃は特に周りに一緒に音楽をしてくれる人がいなかったですね。バンドが好きだったんですけど一人でやるしかなくて。弾き語りも好きなんですがちょっと物足りないなと思ってて、自分ではもっと幅が広がったらいいなと。その時におうちにMacがあったので、これで打ち込みとかしたら曲作れるかもって思って、そこから幅が広がってきたって感じがあります。

– 今は基本的にライブもひとりでやられていらっしゃいますよね。最近シンガーソングライターやトラックメーカーの方で作品のコンセプトや楽曲を自身で詰めてから、バンドメンバーにシェアして一緒にライブをする、みたいなスタイルの人も多いかと思います。アマイワナさんも自分で音楽を作って、演奏はバンドでしたいと思いますか?それともバンドとして曲を作りたいなと思ったりしますか?

アマイワナ どれもやってみたいって気持ちはありますよね。どんな形でもライブしてみたいし、今は自分で曲を作ってますけど、それこそ一緒に誰かと作ったり、提供してもらった曲を歌ってみたりもしてみたいなと思います。今後は提供もしたいです。

知らないことで、しかも面白そうなことは、なるべく一旦やってみたいなって気持ちがずっとあります。

Mega Shinnosuke – Cutie girl (Official Music Video)

 

– なるほど、ありがとうございます。ここからは音楽に対するスタンスのお話をお伺いしたいと思います。例えばMega ShinnosukeさんのMVに出ていらっしゃったり、『泊まれる演劇』 に出演されていらっしゃるだったり、音楽だけにとどまらない表現活動にも積極的ですよね。表現していきたいという気持ちがどこから来るのか、そのルーツについてお聞きしたいです。

アマイワナ モノを作ったり細かい作業が好きだったんですよ。ギターを始めたのも、弾けるようになったら面白いんじゃないかな?って思ったのがきっかけだったんです。「有名になりたい!」 とか「ドカンといこう」とかそういう気持ちで始めたんじゃなくて、どれも「やってみたら面白いんじゃないかな?」 思ってやってみたあと、 また次の課題ができて…みたいなサイクルですね。

表現はずっとしたいって気持ちがずっとあって、何かのきっかけで「映画にでてみたらいいんじゃない?」と言われたときに、断る理由がない自然の流れで映画に出てみたんです。そのあともうちょっとやってみたいなと思ったことを追求したいなと思って、また別の作品に出演したりとか。あと、Mega君みたいに私が面白いなって思ってる人から声をかけてもらった時に、新しい表現ができるかなと思ったりします。 オンラインで演劇は未知の世界だったんです。知らないことで、しかも面白そうなことはなるべく一旦やってみたいなって気持ちがずっとあります。

「恋でもしたら楽になるんじゃないかな」「生きやすくなるんじゃないかな」 と思って「恋せよ惑星」ってつけたんです。

正しい乙女-アマイワナ【MV】

 

– 未知のことって腰が引けちゃったりする人もいる中でその中に飛び込んでいくスタンスってなかなか持ちづらいですよね。ここからはEP『恋せよ惑星』についてお聞きします。コンセプトが明確な作品かと思いますが、アマイワナさんの言葉でコンセプトについてお話いただけますか?

アマイワナ もともとコンセプトを基にしようと思ってた訳じゃないですけど、収録する曲を考えてて、並べ て聴いてみたりしてると、何となく一貫性を感じたんです。たまたまなんですけど、どの曲も女の子が主人公になっていて、それぞれの曲の女の子が尖ってて、生きづらい不器用な感じである意味ちょっと愛おしくなるなぁと思ったんです。 けど私が作っているので女の子たちは私のことでもあるんですけど、EPのタイトルを決める時にその女の子たちに「もっと肩の力を抜いて、もっと楽になってもいいよ」って思ったというか、「恋でもしたら楽になるんじゃないかな」「生きやすくなるんじゃないかな」 と思って「恋せよ惑星」ってつけたんです。

ジャケットは自分で考えてたんですけど、ポップでかわいい何か宇宙っぽいイメージが湧いてきて、 惑星ってつけようと思って『恋せよ惑星』というタイトルになりました。映画『恋する惑星』が映画も好きで、ちょっと似てていいなと思っています。作ってみたらコンセプトEPっぽくなってきたから、ちょっと修正しつつ選曲し直して、全体を通して短編小説集みたいなそれぞれの女の子のストーリーを描いていくオムニバスドラマみたいな感じになっています。一見バラバラに見える曲だけど一貫性があって、見ても聞いても楽しめるんじゃないかな、みたいな気持ちはあります。

– 確かに短編小説という表現がはっとしたというか、共通したテーマがありながらそれぞれにきちんと独立しているのかなとお聞きして思いました。最初に「恋でもしたら楽になるんじゃないか」という言葉はそれぞれの曲中に出てくる女性に対する投げかけたい言葉だったと思うんですけども、そういった女の子の事を書く時はご自身の経験は反映されますか?例えば”新生活”はコロナ禍で書かれた曲ですし、やはり反映されてたりするのかなと思いました。

アマイワナ そうですね。自分の体験とか経験とか感じたこと、その感情が高ぶった時に曲を作ります。 その「楽しい」とか「嬉しい」など感動したことや、「悔しい」とか「かっこいい」とかそういう衝撃を受けて高まった時に作ることが多いので、自分の経験は反映されてると思います。

– 『正しい乙女』を書かれたときに嶽本野ばらさんにお会いされたと聞きました。そのときの 感情の高まりでこの曲を書かれたかなという印象を受けてました。個人的に”正しい乙女”が 一番好きだったんですけども、そのときお会いされたエピソードについて教えていただけますか?

アマイワナ 元々嶽本野ばらさんの作品が好きで、たまたま野ばらさんの誕生日にポエトリーリーディング をする会が催されていて、そこへ行ったんですよね。 そしたらもうポエトリー・リーディングが想像してたよりもめちゃくちゃ奇抜で、圧倒されました。そのあと野ばらさんの小説『ミシン』を持っていたんですけど、そしたらサインを書いてくれて、ハグもしてもらって、そのあとすぐ曲を作りました。

– なるほど。そのとき初めてお会いされたんですよね。実際どうでしたか?

アマイワナ イメージ通りではありました。ちょっと変わった人って思いがちなんですけど本当に愛が深いなって思いました。会場に物販があったんですが、全部ひとりで受付も物販も全部ひとりでやっていらっしゃったんですよ。で、物販も「お金はもう好きな時に払ってね」みたい、全部ほったらかし。そしてお客さんを信用してちゃんと後で払ってくれればいいから!みたいな「母性」を感じました。

レトロさもありつつ都会的なのか、カントリーっぽいのかわからないような不思議な感じがするようにしました。

– 嶽本野ばらさんとの出会いが音楽に変換されて”正しい乙女”を作られたんですね。シンセサイザーが中心にあるキラキラした曲で、ボーカルもふわっと包み込むような感じかなと思ってるんですけど、EPを通してサウンド面で今までと違った点だったり、今回強く意識した点など教えていただけますか。

アマイワナ 今回はアレンジャーにアツムワンダフルさんに入ってもらいました。私が最初に打ち込みでデモを作って、それをもとにアレンジしてもらいました。イメージを大まかに仕上げたあとで、「もっとこうしてください」とか「こういうイメージでお願いします」みたいなのを投げて、さらにめっちゃ良いものが返ってくる、みたいなシステムで制作しました。サウンド的にイメージしたピチカートファイブ、Strawberry Switchblade(ストロベリー・スウィッチブレイド)みたいに、レトロさもありつつ都会的なのか、カントリーっぽいのかわからないような不思議な感じがするようにしています。可愛さがあるのにかわいいだけじゃなくて、ちょっとかっこよさがある、ポップだけどロックみたいな筋の通ったかっこよさみたいなのがあるっていうのを意識してしました。

– ポップな渋谷系と言われるような音楽の影響を受けながらも、2020年の「今の音楽」だなっていう印象受けたのはきっと相反する要素を同居させることから生まれているのかなと思いました。今回リリース上海惑星はギター盛り上がる瞬間が結構ロックな見たっていうの もあるかなと思っていたんですけど、ご自身でいる演奏されてるんですか?

アマイワナ エレキギターに関してはアツムさんにやってもらっています。素敵なギタリストなので、いいなと思ってお願いしましたね。

– 最後の”elephant in the room”ですが、作詞が山崎彬さんで「泊まれる演劇」関連の曲で、作詞を他の方にお願いしたのは今回初めてだったかと思います。自分で作った曲ではない曲で歌う上で、 他の人が歌詞を書かれたことで何か今までと違った点はありましたか?

アマイワナ そうですね。「泊まれる演劇」の冒頭で私が弾き語りで歌う曲で、歌詞を貰って私が曲をつけて作りました。「こういう風にしてほしい」みたいなのは殆ど言われなかったです。が、一個だけ「オンラインでやるので歌詞が聞き取りやすいようしてほしい」ということはお願いされました。他の人が書いた歌詞に曲を付けるのは初めてで、 絶対に自分が書かない歌詞だし、一つ一つの言葉を考えて、より大事に言葉がよく聞こえるように曲を付けたり、面白かったですね。「あ、これどういう意味なんだろう」など自分の役の研究でもありました。

今年は私がすごく80年代カルチャーにハマってテレビも出演したしちょっと遊び心で入れたって感じですね。

– なるほど、アコースティックギターが中心になっている曲っていうのも、聞き取りやすさを優先された結果っていうことなんですね。この曲だけちょっと毛並みが他の曲とちょっと 違うなという印象を受けたので納得しました。ですが、このEPはピチカートファイブや現在の音楽がうまくミックスされているかと思っている一方で、「昭和カルチャー」を積極的に発信されていると思います。その昭和カルチャーとEPとの関係性はどう影響し合っていますか?

アマイワナ そうですね、ほとんど別物って感じですね。昭和のカルチャー自体は、私はただの趣味分野でやっていて、動画あげたら面白いかなみたいなちょっと内輪ノリみたいな感じです。唯一影響してるかなと言うか、意図的に入れてみたのは”上海惑星”の歌詞で「少女は いつもじれったい じれったい」という一節。そこだけ(中森)明菜ちゃんの”少女A”をオマージュしています。”上海惑星”はEPに合わせて最後に作った曲なんですけど、”上海惑星”以外の曲のオムニバス的な曲でもあるし、2020年の要素をちょっと入れて、「こんな年だったな」っていうのを入れたりしてるんです。その(中森)明菜ちゃんのオマージュを入れたのも、今年は私がすごく80年代カルチャーにハマってテレビも出演したしちょっと遊び心で入れたって感じですね。

EPはこちらからチェック!

渋谷系やニューウェーブサウンドが現代のインディーポップとして解釈された作品の『恋せよ惑星』は以下からチェック!ぜひそのドリーミーな世界観に浸ってみてほしい。