バリヤバイ。僕はナンバーガールを日比谷野外音楽堂で目撃してしまった。

2019年8月18日日曜日、東京は日比谷野外音楽堂でナンバーガールのライブが行われた。まさか2019年にあのナンバーガールが観れるなんて想像もしていなかった。

1ヶ月前ぐらいに友人からチケットを譲ってもらい、日比谷に向かう電車に乗りながら過去の音源を聴いても、グッズ売り場にとてつもなく長い列を眺めても、会場に入って楽器が並んだステージを目にしても、ライブが始まるまで本当にナンバーガールが出てくるとは思えなかった。

僕にとってナンバーガールといえば「伝説のロックバンド」という印象だった。実際リアルタイムでナンバーガールを聴いていた世代でもない。

でも、大学生の頃バンドを始めた8年ぐらい前、所属していた軽音楽サークルのメンバーはみんな好きだった。アジカンやBase Ball Bearなどの当時勢いがあったバンドが影響を受けた「すでに歴史になっていたバンド」という印象だった。

実際の活動を知らない分、YouTubeでライブ映像を観たり音源を聴きまくることで「偉大なロックバンド」のイメージがどんどん強化され、神格化されていった感覚はある。少なくとも、僕の周りの連中はだいたいそんな感じだった。

そんな歴史の中にしか存在しないと思っていたナンバーガールが日比谷野外音楽堂でライブをやる。にわかに信じがたかった。初めてのナンバーガールのライブ。端的に言ってものすごいモノを観てしまったという印象だ。僕が心の中で育て上げてきた「偉大で骨太で身体的な音がなる唯一無二のロックバンド」というイメージを壊すことなく、軽くぶち抜いてきたライブだった。

もはや自分の記憶にしっかりと留めておくためにこの文章を書いているのだけど、ナンバーガールのライブが観たくて観たくてたまらなかった人に少しでも「観客が受けた衝撃」をおすそ分けすることができれば幸いだ。

会場の熱気

ライブが始まる前から、会場は熱気に包まれていた。

チケットを取ることができなかった人たちが音漏れを聴くために日比谷公園に集まっている。僕が観た限りでもかなりの人数が野外音楽堂の周りで待機していたようだ。16時30分まではチケットがない人もグッズが買えたので、”Number Girl”の真っ赤なロゴがフロントに入ったTシャツを買うべく沢山の人が列を作っていた。当時青春をナンバーガールに捧げたであろう僕より少し上の世代の人もたくさんいたし、僕と同じ20代後半やなんなら10代後半ぐらいの「明らかに世代じゃない」人もナンバーガールのライブを観にきていた。なんだか異様な空間だったなぁと思う。

赤いテレキャスター

会場に入るとステージ上には楽器が並んであとはライブが始まるのみ、という状態だった。

本当にそわそわしていたし、ライブを観る前に緊張したことなんてほとんど初めてだったと思う。


ステージ中央に赤いテレキャスターが見えるだけで興奮するとも思わなかった。ナンバーガールの向井秀徳といえば赤いテレキャスターなのである。

大当たりの季節

18時。開演時間になるとSEでTelevisionの”Marquee Moon“が流れてくる。するとステージ向かって左手からメンバーがいたっていつも通りな雰囲気でそれぞれの場所で準備を始める。何がいつも通りなのかわからないけど「いつも通りだなあ」と思ったのである。

すると向井秀徳が軽快に「大当たりの季節」のギターイントロが流れ始める。正直興奮してあんまり覚えていないのだけど会場の歓声はものすごかったように思える。でもこれはナンバーガールの向井秀徳だ、と思った。ZAZEN BOYSで新しい音楽を追求している中で変わった部分もあるし、声や歌い方は当時と比べると違った部分もある。でもガムシャラ具合はナンバーガールのそれだった。

ベース中尾憲太郎、ギター田渕ひさ子、そして向井秀徳が、横並びに同じストロークでギターとベースをかき鳴らしている絵が不思議でありながら、とても印象的だった。ザゼンの向井秀徳しか知らない僕からするとこんなバンド然としたサウンドと演奏をするんだ!という驚きだ。

そしてMCを挟んだのかどうか覚えていないが「鉄風鋭くなって」が続く。

NUMBER GIRL – 鉄風 鋭くなって

 

この「戦車が爆進していくような重厚感」と「下手すると人を殺してしまいそうな鋭利でストイックなベースライン」が心をめった刺しにする曲だ。何回コピーしたかわからない。中尾憲太郎の特徴であるダウンピッキングとアップピッキングを組み合わせた変則オルタネイトピッキングで生み出す独特のグルーヴを放つイントロを聴いた瞬間泣いてしまった。ライブで泣くことなんか滅多にないのに、今回ばかりは泣いてしまった。本当にあのベースのフレーズが存在したのか、中尾憲太郎があのフレーズを弾いている、それを目の当たりにしている。泣く以外の選択肢がない。

頭を激しくブンブン振り回してベースを引く中尾憲太郎が曲を押し進める。向井秀徳は叫ぶ、そして田渕ひさ子は歌メロに呼応するようにギターをかき鳴らす。アヒトイナザワのドラムも本当に当時のグルーヴをそのままに見た目のスタイリッシュなドラミングを続ける。

アウトロの「笑って 笑って」はみんな大合唱だった。あれは叫んじゃう。

全裸監督

MCも笑ってしまった。向井秀徳が口を開いたかと思うと「お久かたブーリッ、ブーリッ」と。ライブ中何回も言っていたからきっとお気に入りなんだと思う。

Netflixで絶賛公開中の「全裸監督」の村西とおるインスパイアのMCをバンバンぶち込んでくるものよかった。

 

ロックバンドとしての矜持を見た

ZEGEN vs UNDERCOVERで「ヤバイさらにヤバイ、バリヤバイ」はその日一番の大きな声が出てしまったかもしれない。ああいうミドルテンポでも客を揺らす気迫が凄まじい。シンプルに聞こえるけれどバンドが生き物みたいに思える一体感だった。

NUMBER GIRL – ZEGEN VS UNDERCOVER

 

そして続いたのはOMOIDE IN MY HEADだ。「ドラムスアヒトイナザワ」からのドラムソロからの田渕ひさ子の荒ぶるギターから、イントロ前のブレイクでオーディエンスが「おいッ!」の掛け声。YouTubeでのライブ映像でしか見たことのなかった光景の中にいたと思うと変な気分だ。

OMOIDE IN MY HEAD Live ver [60sec]

 

ナンバーガールをよく知らない人でもきっと聴いたことのある透明少女のイントロが流れてきた時には絶頂だった。「あぁナンバーガールが透明少女を演奏している…」と当たり前の光景に妙に感動してしまった。僕も気がついたらなんとなく夏だったわけだ。

哀愁漂う向井秀徳らしいアルペジオと、田渕ひさ子のコーラスがかかったリフがキレッキレのTATTOOありも心から頭を振ってノリまくったし、Manga Sickのギターとベースのグルーヴもたまらないしアヒトイナザワのストイックなドラムもいい。

そしてこれ。NUM-AMI-DABUTZだ。この曲は後のザゼンっぽい語りと変則的なリズムを感じながらもロックバンドとしてのサウンドは保たれている特徴的な曲。この曲はドラムがメロディーの役割担っているよね、ってぐらい初心者にはどうなっているのかわからない複雑なドラミングなのだ。アヒトイナザワといえばこの曲だ!と記憶している人も多いだろう。

ギターとベースは淡々と同じフレーズを刻むのだけど、ドラムが歌メロと呼応していて最早「メロディー」なのである。めちゃくちゃに踊ったし「必要ねぇぇぇぇ!」と叫んだ。叫びまくった。

NUMBER GIRL – NUM-AMI-DABUTZ

 

IGGY POPU FANCLUBで無事トドメを刺される

そして本編最後に持ってきた曲はIGGY POP FANCLUBだ。こんなのずるい。ずるすぎる。

僕がナンバーガールの曲の中で一番好きな曲だ。正直なところ、興奮しすぎてあんまり覚えてないんだけど、とにかくステージ上の4人に目を奪われながらほぼフルコーラス一緒に歌ってしまったんじゃないかと思う。ギターソロが一番かっこいい曲だし、向井秀徳があんな熱唱して極限まで出し切っているところが見れるなんて思いもしなかった。アンコールはなんとあの曲

本編が終了して完全に抜け殻になっていたのだけど、アンコールがすぐに始まった。何をやるのかそわそわしているとなんだか聴いたことのある音。なんとOmoide In My Headだ!2回も、2回もOmoide In My Headを聴くことができた。つまり「ドラムス、アヒトイナザワ」も2回聴くことができたわけだ。荒ぶる田渕ひさ子のギターも2回。サビの裏声向井秀徳も2回。

そんなことあるの!?!?と、少し驚きはしたが、テンションは爆上がりだ。我も忘れて踊りまくって叫びまくった。

最後には「ナンバーガールで初めてレコーディングした曲です」という一言と共に「Trampoline Girl」を演奏する。完璧な締めだった。

これ以上のライブを見れることはあるのか

向井秀徳のMCで話していた「ぶっ倒れそうです、酒のせいではないですよ」という一言からもわかるように、一滴の出し惜しみもなく、2019年再結成したナンバーガールの全てを出し切っていた。

再結成のライブではあったが、僕にとっては初めてのナンバーガールのライブだった。憧れ、伝説のバンドを目の当たりにできただけで僕は満足していたけれど、これ以上出しようのないセットリストとパフォーマンスだった。きっとこれ以上のナンバーガールのライブを見ることは多分無理だろうな、と思わせるぐらい。

12月からは全国ツアーを回るらしい。今回行けなかった人は是非ともチケットをゲットしてほしい。ライブハウスでナンバーガールが見たい気持ちも実はあったりする。いつ見れなくなるかわからないバンドだから、見れるときに絶対見ておいた方がいい。