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海外文学・翻訳文学が苦手な人にこそおすすめしたい小説3選

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こんにちは、Sleepy head(@SleepyHead_blog)です。

 

あなたは、「海外文学」と聞いてどんな印象を持たれるでしょうか?

 

・馴染みがなくてとっつきにくい

・翻訳された日本語が不自然で読みづらい(特に古い作品)

・何から読んでいいのかわからない

・日本人の作品で十分楽しめるからわざわざ海外の文学に触れる必要を感じない

 

 

など、ネガティブなものがいくつも挙げられるのではないでしょうか。

実際、古典や近代の有名な作品の翻訳というのは、日本語自体が古く読みづらい。

さらに、日本人の作家が、日本語で書いた作品が世の中にたくさん溢れていて、しかも面白い小説なんて数えられないほどある中から、あえて海外文学を読もうとすることなんてないと思います。

 

しかし、現代の海外文学は非常に面白い作品がたくさんあります。

翻訳のクセ、を感じさせない翻訳家の方も実は結構います。

 

実は僕、大学生の時には英文学科に所属していました。

当時の専攻はアメリカ現代文学で、最近アメリカでも頭角を現したような作家を研究していていました。めっちゃニッチ。

翻訳家になりたくて、社会人になってからも個人的に翻訳を続けているぐらいは海外文学が好きです。

 

そんな僕が、海外文学が苦手な人にこそ読んでほしい3つの作品をご紹介したいと思います。

 

 

1.ポール・オースター 『ムーン・パレス』

 

 

アメリカの現代作家の中では最も著名で、数多くの作品を残しているポール・オースター。

個人的に世界で一番好きな作家です。

 

『ムーン・パレス』は、アメリカ人の大学生マーコ・フォッグを主人公に展開する青春小説です。

が多くの作品の中でも最も有名かつ、ストーリーの起伏に富むオースターらしさが一番出ていると言えます。 

 

もちろん青春小説ではありますが、ポール・オースターの作品の特徴は他にあります。

 

ストラクチャー自体は探偵小説的な要素(隠された謎を追う)スタイルが他の作品にも見られるんですよね。

『ムーンパレス』の場合は、そのストラクチャーのなかに、青春・家族愛・恋愛などあらゆる要素を詰め込んだ総合小説と言えると思います。

また、オースターのストーリを前に進めていく要素として「偶然」があります。

 

お金がなくてご飯も食べれない時に、旧友を訪ねたがすでに引っ越してしまっておらず、代わりにいた人たちの朝食に混ぜてもらったり。

その中にいたある一人の女の子に恋をしたり。

そのあと貧乏を極めたあと、ホームレスになりニューヨークのセントラルパークで倒れて死にそうな時にその女の子が助けてくれたり・・・

 

現実は小説より奇なり、なんて言いますが、オースターの小説より奇な現実なんてあったらたまりません

良く言えば「偶然の出来事」、悪く言えば「ご都合主義」でストーリーが進行していくますが、それを小説に馴染ませているテクニックがオースターのすごいところ。

 

翻訳家も、日本を代表する翻訳家である柴田元幸氏が担当。

「できるだけ原文に忠実に翻訳する」スタイルを持たれているので、翻訳に変なクセや嫌味な感じがありません。(いわゆる意訳、をあまりしません)

 

長編小説なので読むのには時間がかかるかもしれませんが、秋の夜長にぴったりの作品です。ぜひ読んで見てください。

 

 

2. ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』

 

すごいタイトルですよね。笑

こちらは2009年に出版されたアメリカ人作家ケヴィン・ウィルソンの短編集です。

翻訳自体は2015年に出版されたのですが、2009年に出版された当初から、僕も毎日コツコツ翻訳していて、僕がこの翻訳を出すんだ!!!と意気込んでいたぐらい好きな作品なんです。

この短編集は11個の短編で構成されています。

 

ポイントは「少しだけ「普通」から逸脱した日々を送る人々」という部分です。

この短編小説のタイトルにもなっている「地球の中心までトンネルを掘る」は、大学を卒業して仕事も見つからない若者3人組が、思いつきで裏庭でトンネルを掘り始めるというお話。

ニートの若者を小説に描くことはありふれていますが、トンネルを掘ることで現実逃避を表現する作家はなかなかいません。

少しだけ逸脱している、少しおかしな要素が、物語を推進している強い力と言えます。

 

他にもチアリーダーに向いていないのにチアリーダーになってしまった内気な高校生の女の子と、近所に住む問題を抱えた少年の恋を描いた「ゴー・ファイト・ウィン」も、ストラクチャーは恋愛だけど、その恋愛をする2人が少しだけ逸脱しています。

 

余談ですが、ケヴィン・ウィルソンの『Family Fang』という長編小説は映画化されています。

 

www.amazon.co.jp

 

こちらは、「かなり」逸脱した家族(両親が前衛芸術家で突拍子もないことをしちゃう、子供が振り回される)のお話ですので、楽しく見れると思います。

まず映画で雰囲気を掴んで見てもいいかもしれません!

 

 

3.セス・フリード『大いなる不満』

 

 

最後はアメリカの若き鬼才、と呼ばれるセス・フリードのデビュー短編集。

ここ最近のアメリカ文学の特徴として「逸脱」と「奇妙」というワードが挙げられるんじゃないか、と思います。

セス・フリードはその「奇妙」さを描きだせる鬼才です。

 

この短編集の中でも一番のインパクトは『フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺』です。

 

毎年行われるピクニックは恒例行事で、毎年爆撃やテロ行為のような恐ろしい行為で人々が虐殺されてしまう。

もう来年はやめよう、もうこりごりだと思いながら、開催時期が来るとみんなが参加してしまう。

そのカラクリも主催者もそのスポンサー企業も正体がはっきりせず、住民たちは無力感を抱えるようになる。

 

というようなお話です。

 

現代の政治や、盲目的に行われる習慣など、一度嫌な目にあって、次はもうこんな目には合わないぞ!と思ったとしても、その後忘れるように仕向けられ、同じことを繰り返してしまうような皮肉が込められています。

 

カフカ『城』を読んだことがある人は同じような無力感を感じることになると思います。

しかしこの奇妙な皮肉が、セスフリードの魅力と言えます。

 

翻訳家は藤井光氏アンソニー・ドーア『すべての見えない光』で翻訳大賞を取った、今一番アツイ翻訳家です。

 

まとめ

 

いかがだったでしょうか。

ただ僕が好きな作品を紹介しただけな感じもしますが、どれも翻訳にクセがなく、ストーリーがしっかりしている、もしくは短編集なので、区切りよく読み進めることができる小説を紹介できたと思っています。

 

昔の古典や有名な作品はどうしても時代背景や当時のカルチャーを知らなければ理解することが難しいですが、同時代の作品であれば、その距離感がぐっと縮まるので読みやすく感じていただけるのでは!

 

では!