僕には邦ロックの「ネタバレ」が理解できない

邦ロック好きの界隈では「ネタバレ」という概念があるらしい。

ライブを見る前に、SNSなどで他会場のセットリストやライブの演出を知ってしまうと「ネタバレ」となるとのことだ。映画やお芝居、小説やスポーツなどではよく聞く話だ。結論や結果を先に知ってしまっては「お楽しみ」が奪い取られるのと同じである。

が、僕にはこの音楽における「ネタバレ」という概念がうまく飲み込めない。

どちらかというと洋楽をたくさん聴いてきたが、これまでの人生の中で好きなバンドのライブを見るにあたって「ネタバレ」を気にした経験は一切ないからだ。

ニューアルバムリリースに際してのツアーならそのアルバムから曲を選んで演奏するだろう。ライブの定番曲も交えながら。だから演奏する曲なんてなんとなく予測がつく。僕はそう思っていた。しかし、どうやら邦ロック界隈の人にとっては「ネタバレ」は厳禁なようだ。邦ロック好きが守らなければならない厳格なルールとも言えるのかもしれない。

洋楽と邦ロックの間には大きな違いがあるようだ。「ネタバレ」という概念から、洋楽と邦ロックにおける音楽に対する姿勢や楽しみ方にそれぞれの特徴が見えてくると思う。理解できないなりに、邦ロックにおける「ネタバレ」という概念について考えてみたい。

なぜネタバレという概念が生まれるのか

そもそも「ネタバレ」という概念が生まれる背景があるはずだ。

何が起こるかわからない状態でライブに臨みたいけど、タネ明かしされて興ざめしちゃうのが「ネタバレ」が意味することだ。セットリストや、ライブ中の演出、もしかしたらMCで何を話すか、なんてことも「タネ」に含まれているのかもしれない。とにかく「何が起こるか」知りたくない、自分の目で確かめて新鮮に驚き感動したいということが伝わってくる。

確かにドームツアーぐらいの規模になると、セットリストや演出をそれぞれの土地で変えるのは困難だ。火が吹き出したり、VJ的に映像を投影したり、スケールの大きな演出がなされるはずだ。全国それぞれの土地で新しい演出なんて無理だろう。

これは理解できる。行ったことはないけれど、星野源とかイエローモンキーなどのライブは、演出やセットリストなどがきっとギチギチに決まっているはずだ。

もはやライブを見るというよりは、演劇や舞台を見にいく感覚。最初から最後まで客を驚かせ楽しませ感動させるストーリーが組まれているから。音楽そのもの以外にも確実に価値があり、エンターテイメントとして機能している。だから余計に事前情報はシャットアウトしたいのだろう。

でもライブハウス程のツアーでネタバレってあるの?

しかし、全国のライブハウスを廻るバンドはどうだろう。彼らもライブに演出をつけるだろう。しかし、セットリストは自在に変えられるはずだし、全国どこでも同じMCをするとは考えにくい。

大規模なドームツアーほど、ネタバレしてはいけないものって無いように思える。しかし邦ロックファンにとっては新鮮な気持ちでライブを迎え、バンドが用意したストーリーに乗って音楽を楽しみたいという気持ちがあるのだろう、と僕は思う。

邦ロックはコミュニティー

特に邦ロックと呼ばれるジャンルに分類されるバンドにはファンの連帯感を感じる。

なんというか、観客の中で守られているルールがあると僕は思う。

同じところで手を上げる、決まったところで合いの手の掛け声がある、アーティストが「ありがとう」というまで拍手しない、シンガロングはボーカルの声を聞きたい人にとって迷惑だからやめる、あとはモッシュサークルを仕切る謎の指揮者みたいな奴がいる、など暗黙のルールや慣習がたくさんある。きっとネタバレをしない、というのもそのルールの一つと言えるのだと思う。

きっとファンが連帯感、帰属感を他のジャンルよりも強く感じることが、邦ロックと呼ばれるジャンルの特徴だと僕は考える。

「僕/私は邦ロックのルールを守っている」感によって、ファンの熱意が強化されるんじゃなかろうか。こういう言い方をすると怒られそうだが、新興宗教には外側から見ると不可解なルールがあったりする。より帰属感を高めるために「このルールを守る人しか認めないよ」という仕掛けだ。

しかし、不可解であっても所属する人たちはきちっと守ることで集団に対する帰属感を感じて満足している。邦ロックファンは、好きなバンドに対して新興宗教的な同じ感覚はを持っているのだと僕は感じる。

「ネタバレ禁止」という概念はそのルールの一旦にすぎない。僕は常々邦ロックは「コミュニティー」としての側面がめちゃくちゃ強いと感じていた。コミュニティーを作用させるためにファンの間で自然発生的に生まれたルールが「ネタバレ禁止」という概念だろう。

洋楽のファン層には見られない傾向だ。そもそも洋楽なんて広い定義からは語ることはできないけれど、観客は好きなように音楽を楽しんでいる。特にルールなんてない、好きなところで踊ればいいし声を出せばいい。あまりに迷惑でなければだいたいなんでもオーケーな気楽な空間だ。

どちらがいいという話ではなく、自分がどう音楽に向き合いたいか、どんな楽しみ方が合っているか、その違いである。

確かにネタバレされたくない気持ちもわかる。そりゃセットリストを事前に知りたい音楽ファンなんていないだろうし、知らない方が新鮮にライブを楽しめる。ただ、僕個人としては自由に音楽を楽しんでいい海外のアーティストのライブの方が気楽で好きだ。ストーリーとか演出よりも「音楽」を聞いて踊りに行くわけだから。生で好きな曲が聞ける空間にいることが大事なのだ。読んでいただいた方は、自分の音楽の楽しみ方やネタバレについての考え方を僕に教えて欲しい。